ヌケガラ状石英 Quartz pseudomorph
重晶石の表面に石英が結晶して、その後、重晶石が溶けて流れ去ったもの、といわれている。重晶石があったと思われる板状の空洞がいくつか確認できる。負の仮晶(かしょう)といわれるもので、俗に「ぬけがら」と呼ばれる。微細な黄銅鉱(?)もともなっており、さらにそれが変質して、緑青がふいたようになっている。白と緑のコントラストがきれいである。
"Introduction to Japanese Minerals"(工業技術院、現・産業技術総合研究所、1970)という英語の本では「日本に特徴的に産出する鉱物」のひとつとして紹介されている。日本では尾去沢以外にも、硫化金属鉱物をともなう熱水鉱脈でひろくみられる石である。鹿児島の金鉱山では方解石後のヌケガラ石英もみられるようだ。外国産はあんまり聞かないが、単に興味が無いから無視されているだけなのか、よくわからない。
Quartz pseudomorph after baryte, which means that quartz crystallizes onto a tabular baryte and then the baryte is dissolved away to remain a quartz incrustation. Tiny chalcopyrite (?) also crystallizes with quartz, and it becomes green due to alteration. This type of pseudomorph is widely found in Japanese metal mines and introduced as a characteristic mineral in Japan in "Introduction to Japanese Minerals" (Geological Survey of Japan, 1970). A quartz pseudomorph after calcite has also been found. I am not sure if such examples are similarly seen in other countries.
追記
重晶石というのはそんなに簡単に溶けるんだろうか。方解石は塩酸ですぐ溶けるし、想像しやすいのだが。まあ固化したんだから溶けてもかまわないか。
北海道・鴻之舞鉱山では板状の方解石後の石英仮晶(やその他、砂状、糖状、葉状の石英)を「ボサ石英」というらしい(浦島幸世「鴻之舞鉱山の含金石英脈中のいわゆるボサ石英」鉱山地質 13号、1954年)。