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Showing posts from October, 2022

白岩焼の水指 Shiraiwa Water Jar

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19世紀 19th century 高さ height 21 cm / 口径 top width 12.5 cm / 胴径 body width 16 cm 褐色の釉薬を背景に青白色のなまこ釉が何本もしたたっている。荒々しさと柔和さとが共存しているようで、いかにも東北のやきものといった感じがする。台所等でつかう甕(カメ)としてはやや背が高く、勝手が悪そうだ。実際この器は前の所持者によって「白岩瀬戸 水指(しらいわせと みずさし)」としたためられた木箱に収まっており、生まれながらにしての茶器だったのではないかと考えられる。白岩焼の主力製品はカメやスズ(徳利)といった生活雑器だったが、茶道具も焼いたと伝えられており、これもどこかの茶道具商の注文品だったのかもしれない。共蓋は付属しない。 なまこ釉は一面は青白く発色しているが、もう一面はやや緑がかった褐色である。釉薬の厚さにムラがあったのか、窯の中で火のあたりが一様でなかったのか。底はべた底で、畳の上に直接置く器(細水指?)としてつくられたことを示唆する。古い秋田のやきものは往々にして白岩焼か楢岡焼か、またはもっと小規模の窯か、の区別があいまいだが、この器に関して言えば、箱書きを信用する限りほぼ確実に白岩焼と言えるので、資料としても貴重である。 Perhaps a typical Tohoku ceramic ware decorated with  namako glaze "icicles". It comes with a wooden box entitled "Shiraiwa Mizusashi " (a water jar used in a tea ceremony). The Shiraiwa pottery mainly produced bottles and jars of daily use, but also some tea-things in response to special orders. I think this jar was originally made as a mizusashi. The flat bottom suggests that this was intended to be placed o

東北の古いすず2点 Old Tohoku Sake Bottles

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むかし、東北あたりでは液体をいれる容器で口が狭いものを一般に「スズ」といった(口が広いやつが「カメ」)。いまのことばでいうと徳利で、おもに酒を貯蔵するのにつかった。戦前くらいの本にはこうした古い用語がみられるが(たとえば渡辺為吉「白岩瀬戸山」1933年)、現代ではこうしたことばを使う人にはめったに出会わないだろう。手元にある「新明解古語辞典」(第二版、三省堂)によれば、 すず 【酒壜】 錫製の口の細長い徳利形の酒器。「―を口へよせずっと飲み」[近松門左衛門・傾城仏の原] とあるのですくなくとも江戸中期頃までは全国的に通用する一般的な日本語だった(東北あたりでは陶器製でも「スズ」といったようだ)。 An old Japanese word suzu means a bottle that was mainly used to preserve sake . This word was widely used in Japan at least until the 18th century, and was probably not uncommon in the Tohoku region even in the early 20th century. 会津本郷焼 すず Aizu-Hongo Suzu 明治期 Meiji period (Late 19th century) 高さ height 27.5 cm / 胴径 body width 18 cm / 高台径 bottom width 11 cm 東京・有楽町の大江戸骨董市に出店している地元福島の業者より入手。やや青味がかった灰白色の釉薬がほぼ全体にかけられ、とくに首から肩のあたりは釉が下方に流れていて躍動感がある。ところどころ素地がみえていて斑唐津を彷彿とさせる、気がする。底に近い部分は褐色の下釉が見えているがうっすらとしかかけられておらず、ほとんど素焼きに近い。口や高台のつくりはていねいで手慣れた感じだ。どっしりして雄大な器形だが、持つと見た目ほど重くなく、作り手の技術の高さが感じられる。容量は一升二合(2リットル強)ほどで、明治頃出回ったスズとしては標準的なサイズである。 会津本郷は17世紀から連綿とつづく歴史あるやきもの産地で、おなじ福島県の相馬地方とともに