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Showing posts from May, 2019

宮田又の黄銅鉱と方解石 Chalcopyrite and Calcite from Miyatamata

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秋田県大仙市協和荒川 宮田又鉱山 裸馬ヒ Raba Vein, Miyatamata Mine, Kyowa Arakawa, Daisen City, Akita, Japan 標本幅 width 80 mm / 重さ weight 199 g 石英と黄銅鉱とがからみあった塊状の銅鉱をベースとして,最大径 17 mm の,一部表面が赤銅色に変化した黄銅鉱結晶が群生し,さらに最大長 15 mm の方解石が多数のる。黄銅鉱はおおむね四面体状に結晶し,耳つき双晶をなすものもみえる。方解石は犬牙状というにはややシャープさを欠き,丸みを帯びる。探さないとわからないくらいの,ごく少量の黄鉄鉱もまじるが,金属鉱物はほぼ黄銅鉱のみ。この感じは,前掲の 同産地の標本 や,おとなり荒川鉱山の標本( 1 , 2 )と共通するものがある。なお裸馬ヒは宮田又の主たる銅鉱脈で,ここから三角式黄銅鉱が産出した(和田利雄,秋田県宮田又鉱山における鉱脈富鉱部の構造規制について,鉱山地質 45-46号,1961)。 Chalcopyrite crystals of the maximum size of 17 mm, partly colored in red brown, grow on a base of chalcopyrite and quartz mixture, in addition with calcite crystals of the maximum size 15 mm. Chalcopyrite is mostly tetrahedral and some form penetration twin with ears. Calcite is too rounded to be called scalenohedral. A few pyrite exist but almost all the metal minerals are chalcopyrite, which resembles previously shown samples from Miyatamata ( 1 ) and from Arakawa ( 1 , 2 ). Raba (unsaddled horse) vein was the main copper deposit in M

大相撲夏場所13日目 Grand Sumo Summer Tournament Day 13th

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朝乃山と栃ノ心の一番。行司は木村玉治郎。栃ノ心に水をつけるのは遠藤。 Asanoyama vs. Tochinoshi, judged ( gyoji ) by Kimura Tamajiro. Endo gives water to Tochinoshin before the match. 夏場所13日目をマス席最後方で観戦。朝乃山は勝てば平幕優勝に望みをつなぎ、栃ノ心は大関復帰を決める、という、どちらも負けられない熱い戦いだったが、なんとも後味の悪い幕切れになった。勝負に水を差す、とはまさにこのことである。 朝乃山は前に出て、寄り切ろうというところだったが、栃ノ心は持ち前の怪力で朝乃山の頭をおさえつけて突き落とす。栃ノ心逆転勝利、に見えたが、かかとが俵を割った、と物言いがあり、6分間という異例の長さの協議の末、軍配さしちがえで朝乃山が勝った。 後味の悪さ、それは審判の協議があまりに長すぎた、ということだ。合理的に考えれば、人間の目よりも、客観的に証拠がのこるビデオによる判定を優先すべきだが、どうもそうならなかったらしい。ビデオでも判定が難しいならば、判定不能により取り直しにすればいい。人間の判断には、先入観や思い込み、錯覚がまぎれこみがちで、後味が悪い。 ともかくこの一番に関しては、なぜに6分間も協議が長引いたのか、なにを話し合っていたのか、結局ひとりの意見がごり押しされて、他の意見がうやむやにされたのか、真相を知りたい。はっきり言って、大相撲は、旧態依然としていて、非合理的なことが多い。すくなくとも「スポーツ」の根本である、勝負を決めること、反則行為の裁定、などは客観的で合理的であるべきだ。現に大相撲にはビデオ審判がいるにもかかわらず、その意見が軽視されるというのは、むしろ本末転倒なこと。土俵下の審判(と控えの力士)は、人間の目で見て軍配に疑問を感じたら、物言いをつける、あとはビデオ再生をして客観的に判断する、どちらが負けた、という積極的証拠がないなら取り直す、これでいいのではないか。 I watched Grand Sumo Tournament Day 13th from the furthest masu box from the ring ( dohyo ). It was an exciting match as As

安四面銅鉱 Tetrahedrite

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Casapalca Mine, Huarochiri Province, Lima, Peru (ペルー) 標本幅 width 75 mm / 重さ weight 163 g 安四面銅鉱の四面体状結晶の集合。割れた部分は銀灰色の輝きをみせるが、結晶面はやや黄色がかっている。これは黄銅鉱の薄い層と思われ、エピタキシーによるものとおもわれる。四面銅鉱の大きな結晶は比較的まれであるが、ひとたび結晶すると、 前掲の標本 もそうだが、シャープなきれいな結晶面をみせる。おもしろい鉱物だ。 A cluster of tetrahedral crystals of tetrahedrite. A fractured part shows a silver-gray color, but the crystal surface is yellowish, which is probably caused by a thin (epitaxial?) chalcopyrite. Large tetrahedrite crystal is relatively rare, but once crystallizes it shows a sharp flat crystal surface.

砒四面銅鉱 Tennantite

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秋田県大館市 花岡鉱山 Hanaoka Mine, Odate City, Akita, Japan 標本幅 width 10 cm / 重さ weight 267 g 黒鉱鉱体中の晶洞に黄銅鉱と砒四面銅鉱が結晶した。方鉛鉱もみられる。母岩は小粒の黄鉄鉱をふくむ珪質の鉱石で「ゲス板」のようになっている。砒四面銅鉱( Cu 6 [Cu 4 (Fe,Zn) 2 ]As 4 S 13 )と安四面銅鉱( Cu 6 [Cu 4 (Fe,Zn) 2 ]Sb 4 S 13 )の区別は一般には難しいとされるが、木下亀城「原色鉱石図鑑」(増補改訂版、保育社、1981)によると、花岡鉱山の黒鉱には砒素に富んだ四面銅鉱が多量に含まれることがある、とのことなので、このようなタイトルにした。くわしい分析をしたわけではない。また入手先の関係上、産地に関しても100%の自信がない。 Chalcopyrite and tennantite crystallize in a cavity in a kuroko (black-ore) deposit with some galena. The silicic base includes many small pyrite cubes. It is generally difficult to distinguish between tennantite and tetrahedrite, but kuroko ores in Hanaoka are said to include arsenic-rich fahlore. 円の直径は 20 mm。 The circle's diameter is 20 mm. 黄銅鉱の結晶標本というのは比較的数が少ないが、四面銅鉱はもっと少ない。日本の四面銅鉱産地は、北海道の手稲、銭亀沢、兵庫県の生野、愛媛の別子あたりが有名かとおもうが、秋田県の尾去沢、そして小坂、花岡などの黒鉱鉱山もかならず名前があがる産地だ。鉱物あつめをはじめてから、図鑑や博物館の石をみては、ほしいなあとずっと思っていたので、手に入ってうれしい。 この標本の場合、四面銅鉱という割には完全な四面体はまれで、いろいろな結晶面をもっている。一見方鉛鉱かとおもう部分もあるが、四面銅鉱はへき開がない。結晶

足尾の閃亜鉛鉱と燐灰石 Sphalerite and Apatite from Ashio

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栃木県日光市足尾町 足尾鉱山 連慶寺河鹿 Renkeiji Kajika Deposit, Ashio Mine, Nikko City, Tochigi, Japan 標本幅 width 55 mm / 重さ weight 131 g やや緑色を呈する母岩の小片に、黒い閃亜鉛鉱がつき、その上に直径 5 mm ほどの六角板状の燐灰石が結晶する。まず閃亜鉛鉱の結晶の形がふつうでない。薄い板状あるいは鱗片状の結晶が、パイ生地のごとく積み重なって一団を形成し、それらが波打つように寄せ集まっている。結晶の形は赤鉄鉱(雲母鉄鉱)か磁硫鉄鉱みたいだ。閃亜鉛鉱はときにスピネル式の双晶を繰り返して、層状の結晶をつくる(たとえば Dana, A text-book of mineralogy, 3rd edition, 1922 )。足尾ではそうしてできた六角柱状の結晶がさらに3個あつまってテトラポッドの片割れみたいになったものが出たという( 砂川一郎、足尾図幅内に産する鉱物、5万分の1地質図幅「足尾」説明書付録、地質調査所、1955 )。写真の標本もそうした層状閃亜鉛鉱の派生なのだろう。 足尾は日本でも有数の燐灰石の産地だ。砂川によれば最大で直径 3 cm に達する結晶がでたという。この標本の燐灰石はサイズが小さく、かわいいものだが、真ん中が黄色っぽくて、外側部分とはあきらかに成分が異なっているようにみえる。 Black sphalerite crystallizes on a piece of slightly greenish host rock with hexagonal platy apatite of 5 mm in diameter. Sphalerite exhibits an unusual crystal habit resembling thin flakes such as hematite or pyrrhotite. Such thin or lamellar sphalerite is generally caused by repeated polysynthetic twinning ( Dana, A text-book of mineralogy, 3rd edition, 1922 ). There has be

瑠璃釉 亀甲文六角猪口 Blue glaze hexagonal cup

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18世紀後半〜19世紀前半 Late 18c - Early 19c 口径 top width 61 - 67 mm / 高さ height 49 mm / 高台径 bottom width 35 mm 六角形(や八角形)の器というのはたまに目にするが、このような小ぶりの猪口はあまり数がない。しかも瑠璃釉で、亀甲の地紋が押されているとくれば、骨董屋も言っていたように、珍品の部類にはいろう。ろくろで丸くひいたあと、亀甲の文様が彫られた型に押しつけて、六角の器形と文様とを同時につくったもの(型打ち成形)と思われる。六つある面の境界で亀甲文様が重なっているところがあるので、一面ずつ型押ししていったのかもしれない。やや厚ぼったいが、口べりは薄く、じかに口をつけても違和感がない。酒をのむのにちょうどよい。 大江戸骨董市 にて。 There are some examples of hexagonal (and octahedral) Imari ware, but those of this size and shape are rare. And it is much more rare to see a cup totally covered by blue glaze with hexagonal pattern. This cup was first shaped on a wheel and pushed onto a mold with a hexagonal pattern carved. The hexagonal patterns on one and another sides overlap, implying that the above mentioned printing process was done six times. The top part of the cup is thin, which is good for drinking sake. Acquired at Oedo Antique Market , Yurakucho. 参考: すでに紹介済みの 瑠璃釉猪口 。 Another blue glaze Imari cup .

ダリネゴルスクの方鉛鉱 Galena from Dalnegorsk

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Dalnegorsk, Primorsky Krai, Russia(ロシア沿海州) 標本幅 width 95 mm / 重さ weight 253 g 鏡のような光沢のある方鉛鉱の群晶。閃亜鉛鉱と方解石をともなう(より黒っぽく、樹脂っぽい輝きをみせるのが閃亜鉛鉱)。方鉛鉱の結晶はおおむね八面体(下の図で o)と六面体(a または k)とがあわさった形状(聚形・集形)をしている。とくに八面体の面に平行な面を共有して2つの結晶が結合し、双晶をなしているものがあり、こういうのをスピネル式双晶という。角みたいに飛び出ている六角形の板状の結晶は、下の図の Fig. 54 と似ている。この標本は、そもそもすごく大きな板状の方鉛鉱の上に、いくつかの結晶が連晶をなしてのっかっているらしく、視線をずらしていくと、それらの平行な結晶面が一斉に光を反射してきれいだ。 A cluster of specular galena crystals accompanied by sphalerite and calcite. Galena shows a combination of an octahedron and a cube. There is a peculiar crystal of a tabular hexagon (spinel-law twin). The base of the specimen is probably a large tabular galena, on which a number of galena crystals grow in parallel. Goldschmidt, Atlas der Krystallformen vol. 1 の Bleiglanz の項から引用。冒頭の写真に見える一個飛び出た結晶は Fig. 54 とそっくりである。 A large crystal in the top of the above specimen resembles Fig. 54 closely. 閃亜鉛鉱もおおむね八面体に結晶するが、方鉛鉱の八面体の面上に、お互いの八面体の面が平行になるように閃亜鉛鉱が結晶している部分がある。方鉛鉱の三角形(または六角形)の面の中に閃亜鉛鉱の三角形の面が埋め込まれているように見えて

藤図 のぞき猪口 Wistaria Nozoki-type Cup

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18世紀 18c 口径 top width 52 mm / 高さ height 62 mm / 高台径 bottom width 40 mm 藤棚からたれさがる藤の花の文様ののぞき猪口。それほど薄造りというわけではないが、手慣れた絵付けで、18世紀中期の上手作である。見込みは五弁花。京都のてっさい堂で手に入れた。 Wistaria is a climbing plant usually cultivated on a trellis. A typical 18th century nozoki cup with skillful drawing. Obtained at Tessai-Do in Kyoto.