ダリネゴルスクの方鉛鉱 Galena from Dalnegorsk

Dalnegorsk, Primorsky Krai, Russia(ロシア沿海州)
標本幅 width 95 mm / 重さ weight 253 g

鏡のような光沢のある方鉛鉱の群晶。閃亜鉛鉱と方解石をともなう(より黒っぽく、樹脂っぽい輝きをみせるのが閃亜鉛鉱)。方鉛鉱の結晶はおおむね八面体(下の図で o)と六面体(a または k)とがあわさった形状(聚形・集形)をしている。とくに八面体の面に平行な面を共有して2つの結晶が結合し、双晶をなしているものがあり、こういうのをスピネル式双晶という。角みたいに飛び出ている六角形の板状の結晶は、下の図の Fig. 54 と似ている。この標本は、そもそもすごく大きな板状の方鉛鉱の上に、いくつかの結晶が連晶をなしてのっかっているらしく、視線をずらしていくと、それらの平行な結晶面が一斉に光を反射してきれいだ。

A cluster of specular galena crystals accompanied by sphalerite and calcite. Galena shows a combination of an octahedron and a cube. There is a peculiar crystal of a tabular hexagon (spinel-law twin). The base of the specimen is probably a large tabular galena, on which a number of galena crystals grow in parallel.

Goldschmidt, Atlas der Krystallformen vol. 1 の Bleiglanz の項から引用。冒頭の写真に見える一個飛び出た結晶は Fig. 54 とそっくりである。
A large crystal in the top of the above specimen resembles Fig. 54 closely.

閃亜鉛鉱もおおむね八面体に結晶するが、方鉛鉱の八面体の面上に、お互いの八面体の面が平行になるように閃亜鉛鉱が結晶している部分がある。方鉛鉱の三角形(または六角形)の面の中に閃亜鉛鉱の三角形の面が埋め込まれているように見えて、おもしろい。おそらくエピタキシーによるものだろう。

ネットで画像検索すると、六角形の板状の方鉛鉱は、ブルガリアのマダン地方にも多産するようだ。日本では秩父鉱山のものが有名で、通称「バンガレ(板状ガレナ)」というらしい。ダリネゴルスク(ダルネゴルスク)は、秩父と同じ、スカルン型の鉛・亜鉛鉱山である。こうした金属鉱物以外にも、蛍石のきれいな結晶などが有名である。秩父の鉱床は1000万年〜数100万年前にできたとされるが(秩父鉱山〜140種の鉱物のきらめき〜展示解説書、埼玉県立自然の博物館)、ダリネゴルスクのスカルンの形成年代は、数千万年前、日本海ができるもっと前の時代のようだ(たとえば Late Palaeozoic and Early Mesozoic Circum-Pacific Events and Their Global Correlation, Cambridge University Press, 2006 など)。

There is a triangle of sphalerite that looks to be inlaid within an octahedral surface of galena, probably caused by epitaxial growth. A hexagonal platy galena is also known at Chichibu mine in Japan. Both mines are of skarn type, located at opposite sides of the Sea of Japan. The Chichibu skarn deposit was generated ten to several millions years ago after the creation of the Sea of Japan, and the Dalnegorsk deposit is much older.

参考