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Showing posts from 2020

秩父の板状方鉛鉱 Platy Galena from Chichibu

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埼玉県秩父市中津川 秩父鉱山 大黒鉱床 Daikoku Deposit, Chichibu Mine, Nakatsugawa, Chichibu City, Saitama, Japan Size: 60 × 47 × 37 mm / Weight: 184 g 秩父鉱山大黒鉱床から産した鉱片で、これも 前回 にひきつづき先日の東京ミネラルショーの戦利品。上の写真で、右側の樹脂光沢を放つ黒色部分が閃亜鉛鉱、左側の白っぽく見えているのが方鉛鉱。その他、少量の石英と茶色い炭酸塩(菱鉄鉱?)とをともなう。大黒鉱床は石灰岩体に熱水が大規模に貫入して生じたので、このように炭酸塩鉱物が散りばめられるのがお約束である。 さてこの標本に特筆すべきは、方鉛鉱の八面体結晶がスピネル式双晶をなして厚板状になり、それらが多数平行連晶しているところ。一部愛鉱家のあいだでは「板状ガレナ(略称:バンガレ)」とよばれ、秩父鉱山の名物とされる。実は 昨年の東京ミネラルショーでも同様の標本 を手に入れたのだが、今回のほうがより結晶が立派で、閃亜鉛鉱もともなっていたので、今年もお迎えした。似たような標本を買い集める、ほとんどビョーキ、、、か。 This piece is also from my recent collection at Tokyo Mineral Show 2020 . Seen in the above photo are sphalerite with resinous luster in the right and specular galena in the left, accompanied by some quartz and brown carbonate that testifies that Chichibu-Daikoku is a skarn-type lead-zinc deposit. It is remarkable that galena crystals are spinel-law twinned to form a large plate. I showed a similar platy galena last year . 三角または六角の面が整然とならんでいる。全体として一枚の板状の結晶を形成

辻村塊 引き出し黒ぐいのみ(高島屋酒器展) Black Sake Cup by Tsujimura Kai

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辻村塊 引出黒ぐいのみ 胴径 78 mm / 高さ 49 mm 歳末恒例の日本橋高島屋・酒器展にいってきた。今回みつけた器のタイトルにある引き出し黒というのは、わたしのうろ覚えによれば、千利休の時代に美濃で確立した手法で、黒釉をかけて簡易な窯で焼いて、赤熱した器を引き出して急冷(場合によっては水冷)する、というワイルドな焼きもののこと。瀬戸黒ともいう。京都の黒楽茶碗と似たような手法だとおもう。急冷することで渋い黒の風合いが得られる、らしい。この作品は、黒の釉薬に嫌味がなく、腰のあたりのカセ具合もよろしく、たいへん気に入った。酒器展の会期は1月5日まで。 I went to Takashimaya, Nihonbashi, to see a special exhibition of  sake -wares. The correct title of the above ceramic cup means a taking-out black sake cup, which uses a technique invented in the late 16th century in Mino district (Gifu prefecture) to make a black glaze better by means of rapid cooling after firing. It is also called seto-guro , and will be similar in technique to raku-yaki in Kyoto. I liked a kind of naturalness of the black glaze of this cup. 作者の辻村塊さんのことはなにも知らなかったのだが、あとでネットでしらべたところ、お父さまの辻村史朗さんがたいへん有名な陶芸家で、海外の美術館にも作品が収められているそうだ。あの荒川豊蔵が生前絶賛した、と書いている記事もあった。ともかく、気に入った器がみつかってよかった。 日本橋のあたりはいわゆるアンテナショップがいっぱいある。そのうちのひとつ滋賀のショップに立ち寄って鮒寿司を買った。鮒寿司は「臭い」とよくいわれるが、いまだかつてこれを臭いとおもったことがな

小坂鉱山の鉱物(池袋ショー 2020) Minerals from Kosaka Mine

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東京の新型コロナウイルス新規感染者数が過去最大となった先週末、池袋で開催された 東京ミネラルショー(通称:池袋ショー) にいってきた。コロナ禍の渦中で、海外のディーラーの多くが不参加だったり、事前予約制だったこともあり、会場の混雑は例年ほどではなかったようだ。以下、戦利品のうち、秋田県の小坂鉱山産の2点を紹介する。 I went to Ikebukuro to see Tokyo Mineral Show 2020 last weekend when the daily number of people in Tokyo infected with coronavirus came to the maximum. People in the site were not so many partly because most of the dealers from abroad didn't come. I will show two pieces from the Kosaka Mine, Akita, from those acquired at the show. 水晶 Rock Crystal 秋田県鹿角郡小坂町 小坂鉱山 内の岱鉱床 Uchinotai Deposit, Kosaka Mine, Kosaka Town, Akita, Japan Size: 92 × 73 × 45 mm / Weight: 111 g 最長 2.5 cm の水晶が放射状に生える。基盤部分はいわゆるヌケガラ状石英のようで、表面には黄銅鉱の結晶が散らばっている。黄銅鉱は表面が変質して茶色っぽい。以前紹介した 尾去沢鉱山のヌケガラ石英 にも変質した黄銅鉱が多数くっついており、なにか共通性を感じる。 Quartz crystals to 2.5 cm in length grow radially from a base that will be a quartz pseudomorph after baryte over which tarnished chalcopyrite are scattered. A common characteristic was seen in a quartz pseudomorph from t

硫塩鉱物を知りたい

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硫塩鉱物大集合。 鉱物の本などをみると「硫化鉱物」と「硫塩鉱物」とが独立に扱われている場合があるが、このちがいはそもそも何なのか?こういう分類をしてなにがうれしいのか?ちょっとしらべてみた。 参考にしたおもな本・記事は: Sulfide Mineralogy (Mineralogical Society of America Short Course Notes vol.1, ed. Paul H. Ribbe, 1974) の第1章と2章。 加藤昭「主要鉱物各説」(無名会、2017年)、同「硫化鉱物読本」(鉱物読本シリーズ No.4、関東鉱物同好会編、1999年)。 David J. Vaughan and Claire L. Corkhill, Mineralogy of Sulfides (Elements, Vol.13, pp.81-87, 2017) Wikipedia の Sulfosalt Mineral の項目。 うわつらをかいつまんだだけなので、生半可な解釈があったらコメントをください。 金属の硫化物 金属元素と硫黄とが結合した鉱物を硫化鉱物という。加藤昭「主要鉱物各説」によると、このうち原子どうしの結合が構成元素の原子価(原子から伸びる腕の数)の概念で説明可能なものを「 単純硫化鉱物 」とよぶ。たとえば 方鉛鉱 Galena: PbS = Pb 2+ + S 2- 輝銅鉱 Chalcocite: Cu 2 S = 2Cu + + S 2- 黄鉄鉱 Pyrite: FeS 2 = Fe 2+ + (S 2 ) 2- など。硫化鉛は方鉛鉱一択だが、銅の硫化物にはもうひとつ銅藍(Covellite: CuS = Cu 2+ + S 2- と解釈可能)がある。黄鉄鉱(または白鉄鉱)は二硫化物に分類され、硫黄原子が2個結合した二硫化物イオンと鉄とが結合した結晶、と理解できる。いわゆる硫化鉄(トロイライト Troilite: FeS や Fe 2 S 3 )は天然ではほとんどあるいはまったく産出しない。 実際の原子間の結合、結晶構造がどうなってるかはそんなに簡単ではない。ともかく組成上「単純に」解釈できる、というだけの話。 周

御徒町でお買い物

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東京都のJR御徒町駅の南東側一帯は、言わずとしれた貴金属、宝石、宝飾品の問屋街である。わたしの興味に沿うような店はほとんどないのだが、先週末、買い物がてらちょっと寄ってみた。 アフガンブラザーズ ここはアフガニスタンやパキスタンあたりの鉱物標本を扱っている。今回は、再来週の池袋ショーの準備なのか、店員さんが鉱物標本をホットボンドでアクリル板に固定する作業をしていて、できた製品がたくさん店頭にならべてあった。つぎの2点を手に入れた。 ファーデン・クォーツ Faden Quartz Waziristan, Pakistan (パキスタン、ワジリスタン) Size: 64 × 30 × 7 mm 真ん中に白い筋があって、そこから両側に石英の板状結晶が成長している。水晶の日本式双晶でこういう白い筋がはいっているのを見たことがあるが、それと似ている。でも双晶というわけではなさそうだ。 ジルコン Zircon たぶん Astore Valley, Gilgit-Baltistan, Pakistan (パキスタン) Size: 40 × 30 × 21 mm 径 1.5 cm までの赤ブドウ色のジルコン結晶が数個、黒雲母を主体とする母岩に埋まっている。結晶にダメージがあり、値段はお手頃。おなじような色合いで、おそらく径 4 〜 5 cm に達するとおもわれる単結晶の破片もおなじぐらいの値段で売られていた。もしこの大きさで結晶が四周完全だったら相当の値段がつくだろう。 ラピスラズリ Lapis Lazuli アフガニスタン Size: 65 × 50 × 40 mm これは随分前に入手したもの。ほぼ全面研磨されていて、黄鉄鉱のつぶつぶが散らばる。アフガニスタンはラピスラズリの原石の産地として古来有名で、堀秀道「楽しい鉱物図鑑」によると、シルクロードの西半分は「ラピスロード」と言ってもいいくらい、古来中東〜ヨーロッパではこの石が珍重されたという。アフガンブラザーズは、店内商品総重量の半分くらいはラピスラズリなんじゃないか、と思えるくらい大量に原石やその加工品を陳列している。あとこの店はアフガニスタンの遺跡から出るローマンガラスの品揃えも豊富。 信一商事(11Mineral) ここは中国産の

足尾の槍状方解石 Spear-like Calcite from Ashio

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栃木県日光市足尾町 足尾鉱山 Ashio Mine, Nikko City, Tochigi, Japan 標本幅 width: 4.5 cm / 重さ weight: 61 g 飴色透明〜やや白濁した犬牙状の方解石結晶。犬牙状といってもよくあるタイプとは違って、より鋭く尖った、槍状とか錐状と形容すべき結晶形が目を引く。これは日本では足尾独特のもので、 和田維四郎「日本鉱物誌」(改訂版、1916年) に記載されているところの Ω(6.5.-11.1) を主面とする結晶とおもわれる。六角錐の頂点が別の結晶面で切られていたり、板状に近い扁平な結晶があったり、いろいろバリエーションがある。上の写真の左側にみえる上半分が白濁したひし形薄板状のものは、また異なる晶相なのだろう。 Yellowish to milky white scalenohedral calcite. This is narrower than usual "dog-tooth" calcite, probably composed of Ω(6.5.-11.1) that is peculiar in Japan to Ashio according to Wada Tsunashiro's "Minerals of Japan" (1916). The spear's tip is cut by a different surface. A thin diamond-shaped plate shown in the top photo will be a different type.  反対側。 足尾はいろんな意味で特筆すべき鉱物産地である。鉱床の規模が大きかっただけでなく、多種多様な鉱物を産出した。おもに銅鉱が採掘されたが、錫やタングステン、ビスマスなどの金属も出た。その他方解石、燐灰石、蛍石が多産し、ラドラム鉄鉱などめずらしい鉱物もみられた。 Mindat.org によれば足尾で確認されている鉱物は 50 種を数える。そしてここでしめした槍状方解石の他にも、板状・葉状の黄銅鉱とか、六角柱状の磁硫鉄鉱の連晶とか、独特な結晶形状がみられたことも特筆すべき点である。 The Ashio Min

花岡の石膏 Gypsum from Hanaoka

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秋田県大館市 花岡鉱山 Hanaoka Mine, Odate City, Akita, Japan 対角長さ diagonal length: 11.5 cm / 重さ weight: 190 g 透明な石膏の単結晶。ひし形の台形みたいな、あるいは金のインゴットを斜めにひしゃげたような、石膏結晶としてはもっとも典型的な形状をなす。大きさはかなりのものだが、花岡鉱山はこのような石膏の大結晶を多く産出したことで知られる。和田維四郎「日本鉱物誌」(改訂版、1916年)には主軸方向に 18 cm のものがあったと記されている。結晶面がほぼ完全にでているのが、この大きさにしては貴重である(ただし上の写真の反対側は劈開面)。傷だらけだが、石膏はモース硬度 2 のやわらか鉱物の代表なのでしかたない。佐藤伝蔵「大鉱物学・下巻」(1925年)によれば b(010) の劈開面の硬度は 1½ と、それと直交または斜角の方向の面よりやわらかいという。 A pretty large transparent single crystal of gypsum. Hanaoka was a famous kuroko metal mine and was also known in Japan as a locality of large gypsum crystals. Wada Tsunashiro wrote in Minerals of Japan (1916) that the biggest one was 18 cm in length. 台形の上面にあたるのが b(010)。この面だけ透明感に乏しい。和田「日本鉱物誌」によると花岡の b 面は「ときに曇る」そうで、たしかにそのとおりだ。手前の面が l(011) で、もうひとつの m(120) 面よりもよりつぶれた台形(富士山みたいな形)にみえる。 The top face, b(010), is obscure as described by Wada's Minerals of Japan. 台形の底面にあたるもっとも広い面は劈開面。佐藤「大鉱物学」によるとこの b 面に平行な劈開面は真珠光沢をしめす、という。たしかにそんな気がする。 The bottom is a c

ヘルジャの輝安銅鉱 Chalcostibite from Herja

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Herja Mine, Baia Mare, Maramureș County, Romania(ルーマニア バヤマーレ ヘルジャ鉱山) 標本幅 width: 44 mm / 重さ weight: 44 g メタリックブルーの輝安銅鉱が黄鉄鉱をともなって石英脈中の晶洞に結晶した。輝安銅鉱の本来の色は黒光りする、輝安鉱に似た感じのものだが、この標本ように青みがかった錆色がつくことがあるらしい。むしろこういう変色したもののほうが同定が楽というのはある種のジレンマといえる。結晶の形はカミソリのような薄板状で、やや縦長に伸びるのが典型的である。 Metallic blue chalcostibite crystalizes with pyrite in a quartz vein. Chalcostibite often shows this specific rust. The crystal shape is thin like a razor blade and tends to be elongated in one direction. 輝安銅鉱は組成が CuSbS 2 で、輝安鉱(Sb 2 S 3 )と輝銅鉱(Cu 2 S)とを同じ比率で混ぜたような硫塩鉱物。まさに輝安銅鉱の名にふさわしく、英語でも Chalcostibite である。組成が単純な割には産出がまれな鉱物で、とくに自形の結晶標本となると博物館でもお店でもあまりみかけない。日本の産地としては愛媛県砥部町の優量鉱山が知られる。 Chalcostibite (CuSbS 2 ) is a sulfosalt that is formally a one-to-one ratio mixture of chalcocite (Cu 2 S) and stibnite (Sb 2 S 3 ). The name properly expresses itself. It is quite a rare mineral, though the composition is simple. The Yuryo Mine in Tobe Town, Ehime Prefecture, is one of well-known localities in

フルカニの鶏冠石とジンケン鉱 Realgar and Zinkenite from Julcani

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Julcani Mine, Angaraes Province, Huancavelica, Peru(ペルー ワンカベリカ県 フルカニ鉱山) 標本幅 width: 43 mm / 重さ weight: 19 g 針状、柱状のジンケン鉱が密生した小さな鉱片で、丸っこい鶏冠石がその上に散らばっている。このあいだ紹介した 硫砒銅鉱 と同じペルーの産地。 鶏冠石(AsS)については、どの本をみても「光に弱いので暗所に保存せよ」と書いてある。堀秀道「楽しい鉱物図鑑」(草思社)によれば湿気や振動にも弱いかもしれない、という。ジンケン鉱(Zinkenite: Pb 9 Sb 22 S 42 )は輝安鉱(Sb 2 S 3 )と方鉛鉱(PbS)とを 11 : 9 の割合で混ぜたような組成をもつ硫塩鉱物。輝安鉛鉱という和名もある。見た目は輝安鉱とか毛鉱・ブーランジェ鉱なんかともよく似ている。産出はかなりまれだが、ネットで画像を検索するとボリビアのオルロ(Oruro)産の標本に立派なのがある。 黒光りするこれらの鉱物がすべてジンケン鉱なのか、輝安鉱やその他の硫塩鉱物もふくまれているのか、よくわからない。むずかしいことはともかく、色のコントラストが美しい標本ではある。 A small piece of Peruvian metallic ore from the same locality as enargite , almost entirely covered by acicular or prismatic zinkenite and sprinkled with realgar. Any books on minerals say that realgar should be stored in a dark place. Hori Hidemichi says in his book that damp and even vibration may enhance realgar's decay. Zinkenite has chemical composition that is exactly the same as eleven Sb 2 S 3 's (stibnite) and nine PbS's (

ウッツの辰砂 Cinnabar from Uttsu

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北海道紋別市渚滑町宇津々 ウッツ鉱山 Uttsu Mine, Syokotsu-Cho Utsutsu, Mombetsu City, Hokkaido, Japan 標本サイズ size: 8.4 cm × 5.7 cm × 2.5 cm / 重さ weight: 180 g 赤い辰砂の微結晶が鉱脈中に散りばめられる。劈開面がキラキラ光る。辰砂(HgS)の比重は 8.1 で石英の 3 倍の重さだが、この鉱石片は見た目ほど重くないので、辰砂がパンパンに充満しているわけではなさそうだ。とはいえ相当高品位の水銀鉱石である。 北海道には数多くの水銀鉱床があった。もっとも規模が大きかったのが北見市(旧留辺蘂町)のイトムカ鉱山で、ここは自然水銀がおもな鉱石(鉱滴?)だったことでも有名である。ウッツの水銀鉱床は1940年代に発見され、一時休山していたものを、野村鉱業(現・野村興産)がイトムカの支山として再開発し、1963年まで稼行した。 Minute red crystals of cinnabar with twinkling cleavage faces are embedded in a vein. As this piece is not so heavy, cinnabar would not occupy the volume very much. However, this is quite a high quality mercury ore. There were many mercury deposits in Hokkaido. The biggest one was Itomuka (Kitami City, former Rubeshibe Town), which was unique in that the main ore was native mercury. The Uttsu mine was found in 1940s and operated by Nomura Mining Company as a secondary ore field of Itomuka until 1963. 反対側。 The opposite side. 拡大写真。円の直径は 20 mm。 The ci

今金町のマンガン鉱とめのう Manganese Ore and Agate from Imakane

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軟マンガン鉱 Pyrolusite 北海道瀬棚郡今金町 美利河鉱山 Pirika Mine, Imakane Town, Hokkaido, Japan 標本幅 width: 9 cm / 重さ weight: 360 g 北海道南西部から東北北部(とくに岩手県)には多数のマンガン鉱山があった。鉱石鉱物は菱マンガン鉱、ハウスマン鉱、バラ輝石など、それぞれの鉱床によって異なるが、ここ美利河(ピリカ)鉱山では黒色の酸化マンガン鉱が主たる鉱石だった。ラベルによるとこの標本は軟マンガン鉱(パイロルース鉱 MnO 2 )。れっきとした自形結晶こそみられないが、表面の光沢は光を反射して白っぽくみえるほどで、なかなか立派なものだ。美利河では他にもカリウムを含んだクリプトメレーン鉱(KMn 8 O 16 )や水マンガン鉱(MnO(OH))などが見られたが、土状・塊状のものは見た目が似ている場合が多く、一般に識別はむずかしいとされる。 There were many manganese mines in the southwest Hokkaido to the north Tohoku (especially Iwate) area. The deposits were characterized by their own ore minerals such as rhodochrosite, hausmannite, and rhodonite. The Pirika deposit was mainly composed of black manganese oxides. This photo shows an example of pyrolusite (MnO 2 ), which is relatively crystalline with a dull metallic luster. Other ore minerals were cryptomelane (KMn 8 O 16 ) and manganite (MnO(OH)). 岩本鉱産物商会の古いラベル。美利河鉱山は1892年に発見され、1950年代には閉山している。おそらく鉱山稼働中に採取された標本だろう。「後志国」の古めかしい表記が残る。 An

ナイカの方鉛鉱 Galena from Naica

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Naica Mine, Saucillo Municipality, Chihuahua, Mexico (メキシコ チワワ州 ナイカ鉱山) 標本幅 width: 90 mm / 重さ weight: 271 g ずっしりした方鉛鉱の塊。結晶表面はまるで溶けたように丸みを帯びる部分がある。成長丘(融解丘というべきか?)の紋様がおもしろい。方解石や少量の黄鉄鉱、黄銅鉱をともなう。方解石の一部がオレンジ色になっているが、これは黄鉄鉱、黄銅鉱が変質して鉄がにじみ出たことによるものだろう。 ナイカ鉱山は、長さ 10 m にもおよぶ巨大石膏結晶が林立する洞窟の存在が今世紀初頭にあきらかになって有名になったが、もともとは銀、鉛、亜鉛等を産出した歴史ある鉱山。近年まで稼行していたが現在は休山中のようである。石灰岩層を交代したいわゆるスカルンの鉱山で、チムニー状およびマント状の金属鉱床を採掘した。 mindat.org によれば 100 種類以上の鉱物がここで見いだされている。 A massive piece of galena associated with calcite and some pyrite and chalcopyrite. Galena's surface is partly rounded as if it were melted after crystalized. The pattern of growing (or melting) layers is interesting. The orange color of calcite is probably caused by iron effused from oxidized pyrite and chalcopyrite. The Naica Mine became famous after the discovery of Cave of the Crystals that was occupied by giant gypsum crystals to 10 m in length, but it had been a historical silver, lead and zinc mine in Mexico that was active until recen

フルカニの硫砒銅鉱 Enargite from Julcani

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Julcani Mine, Angaraes Province, Huancavelica, Peru (ペルー ワンカベリカ県 フルカニ鉱山) 標本幅 width: 33 mm / 重さ weight: 23 g ほぼ硫砒銅鉱(Cu 3 AsS 4 )のみからなる小さな鉱片。独特な結晶の形がよく観察できる。日本の 小坂鉱山の硫砒銅鉱 は以前紹介したが、結晶の感じはよく似ている。表面が青っぽいのが奇妙だが、これは硫砒銅鉱を覆うように薄い「皮」みたいなのがくっついていて、その色だと思われる。硫砒銅鉱じたいがその場で変質したのか、なにかが外から鉱液にのってやってきて沈殿したのか。 Julcani (フルカニ)鉱山は多種類の金属を伴う鉱脈型鉱床を有していて、鉱物標本的にもおもしろいものを提供しているようである。この前紹介した ヤオガンシャンの硫砒鉄鉱 (FeAsS)といっしょに、ホリミネラロジーの即売会で入手した。 A small piece of copper ore composed of enargite. The crystal shape is similar to the one from the Kosaka mine in Japan, but the blue surface color is peculiar. It is probably due to a thin layer coating the enargite crystal. Acquired at a sale of Hori Mineralogy together with Yaogangxian's arsenopyrite . 硫砒銅鉱の表面を覆うように薄皮がはっている。硫砒銅鉱じたいは微妙に赤っぽい感じの色を呈している。 A skin covers the surface of enargite. Enargite's original color is a little reddish.

ヤオガンシャンの硫砒鉄鉱 Arsenopyrite from Yaogangxian

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Yaogangxian Mine, Chenzhou, Hunan, China(中国湖南省 瑶崗仙鉱山) Size: 39 × 37 × 22 mm / Weight: 74 g ほぼ硫砒鉄鉱(毒砂)からなる鉱片。やすりか、歯車の歯か、はたまたフィギュアのスケート靴のつま先か、といったギザギザが特徴的だが(英語圏では「にわとりのトサカ」と形容するらしい)、これは m(110) と u(012) からなる結晶が a 軸方向にほぼ一定間隔で平行連晶したもの。この標本に出ている硫砒鉄鉱の全部が全部こういう連晶をなしているのがおもしろい。なにがなんでもそういうふうになりたい晶出環境だったのだろう。 A small piece of almost pure arsenopyrite. Every crystal looks like cock's comb, which is caused by parallel intergrowth along the a-axis of crystals defined by m(110) and u(012) surfaces. 先月のホリミネラロジーの即売会で入手した。ヤオガンシャン鉱山は多種多様で美麗な標本を供給するという点でおそらくもっとも著名な中国の鉱物産地とおもわれるが、その即売会でも蛍石や車骨鉱などの標本がたくさん売られていた。ヤオガンシャンは鉱脈型とスカルン型とが複合するタングステン・錫鉱床、だそうだ。日本でいったら茨城県高取鉱山とか京都府大谷鉱山なんかと埼玉県秩父鉱山とがミックスしたような産地、といったところだろうか。 Acquired at a sale of Hori Mineralogy last month. Yaogangxian is presumably the best known mineral locality in China. There were beautiful fluorite and bournonite specimens at the Hori's sale. The deposits in Yaogangxian are of composite type of hydrothermal vein and sk