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Showing posts from May, 2021

尾去沢鉱山の砒四面銅鉱 Tennantite from Osarizawa

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秋田県鹿角市 尾去沢鉱山 Osarizawa Mine, Kazuno City, Akita, Japan Size: 45 × 33 × 26 mm / Weight: 78 g 黄銅鉱主体の鉱脈中の空洞に面して四面銅鉱の結晶が多数着生した。結晶サイズは 1 mm ほどと微細ながら、結晶面はたいへんシャープで文字通りおおむね四面体をなし、キラキラとした金属光沢を放っている。一部、黄銅鉱の四面体結晶もみえる。黄銅鉱と四面銅鉱との共生の感じは、 前に紹介した花岡鉱山産 のと共通する(ただし四面銅鉱の結晶の形は異なる)。 A part of cavity surface in a chalcopyrite vein is covered with numerous tennantite crystals that are merely 1 mm in size but showing sharply formed tetrahedral faces with metallic luster. There are also tetrahedral crystals of chalcopyrite. It is similar in occurrence to a piece from the Hanaoka Mine, Odate City, that has previously been shown . 結晶面に蝕像のような模様がみえるところがある。写真幅は約 8 mm。 黄銅鉱の四面体結晶もみられる。写真幅は約 5.5 mm。 尾去沢からは砒素に富んだ四面銅鉱が出ることが昔から知られており、添えられていた茶色くすすけた古いラベルにも「砒黝銅鉱」とある(これは砒四面銅鉱の昔の呼び名)。「日本鉱物誌」(改訂版=1916年、第三版・上巻=1947年)によると尾去沢の砒四面銅鉱はやや紅色を帯びた鉄黒色の四面体式もしくは d(110) を主面とする斜方十二面体式で、径 5 〜 10 mm に達するとある。また分析によればアンチモンをまったく含まない純粋な砒四面銅鉱だという(ただし微量の鉄は含む)。この標本に関して言えばあんまり「紅色」の感じはしない。 「南部鉱物標本解説」(原著 南部秀喜、1996年)によれば、四面

尾去沢鉱山の赤銅鉱 Cuprite from Osarizawa

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秋田県鹿角市尾去沢鉱山 Osarizawa Mine, Kazuno City, Akita, Japan 銅鉱床の酸化帯に生じた自然銅の薄板の表面を赤銅鉱が覆う。赤銅鉱の表面は黒化しているものがほとんどだが、一部は赤色透明な輝きをみせる。サイズは小さいながらも八面体に準ずる結晶もみられる。 A tiny piece of native copper plate is covered with cuprite, which is mostly black but some show translucent red color. There are some octahedral crystals though the size is small. 全体像。茶色の部分が自然銅、暗紅色の部分が赤銅鉱。 Size: 36 × 33 × 5 mm / Weight: 8 g 「南部鉱物標本解説」(原著:南部秀喜、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、1996年)によれば、尾去沢の赤銅鉱は産状から 自然銅にともなうもの: これがもっとも多く、樹枝状自然銅を被覆して暗赤色金剛光沢をもつ八面体、まれに六面体結晶が群生する 閃亜鉛鉱にともなうもの: 閃亜鉛鉱の周囲が赤銅鉱化したかのような観を呈するもので、塊状または結晶をなすものもある 黄銅鉱にともなうもの: ブロシャン銅鉱などの銅の二次鉱物と共生する に分類される。ここで紹介した標本はあきらかに第1の類型にあたるが、他にも閃亜鉛鉱や黄銅鉱から変化したとおもわれる例があるのが興味深い。一般には、まず天水の侵入により黄鉄鉱が分解して(バクテリアが関与しているとされる)、酸化作用のある硫酸第二鉄を生じ、これが黄銅鉱を分解して硫酸銅をつくり、そしてこれが他のさまざまな鉱物と反応して銅の二次富化鉱床を形成する、とされる。この標本の場合はまず自然銅ができて、それがさらに酸化されて赤銅鉱に変化したのだろう。一方、上に記した類型2や3の場合は、自然銅を経由せずに直接赤銅鉱が生じたのだろう。 Nambu Hideki described that cuprite in the Osarizawa deposits are categorized into three type

井の頭公園へ Inokashira Pond

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以前、井の頭公園にいったときは池がかいぼり中だったが、その後いままでみられなかった藻が繁殖して水生動物の生育環境が改善されたというニュースをみたので、久しぶりにいってみた。緊急事態宣言下の週末で遠出もままならないので、公園ぐらいしか行くところがないが、園内はそこまで混雑はしていなかった。 I went to Inokashira Pond, Musashino City, that was drained for maintenance at the last visit. Water plants have grown again because of improvement of water environment. たしかに水草がみられる。 Water plants recover after draining. カモのつがい。 A pair of ducks. いまいち「使用前」の状態がよくわからないのでなんとも言えないが、この人口密集地帯の池としてはきれいになったんだろう。 その後、中道通りの「 マジェルカ 」というお店で小さなガラスの器を買った。 うらやすガラス幸房 高さ: 68 mm あげ底になっていて適度に重量感があり、色もきれいで気に入った。こういうのはありそうでない。綿棒入れとしてつかうことにした。 このお店は一般に障がい者とよばれる人たちの工芸・手芸等の芸術作品がたくさん売られている。こういう作品はえてして品物の品質・芸術性の高さと値段とがつりあってないことが多い。この器だって1000円でもまだ安いくらいだ。このお店は「ウェルフェアトレード (= Welfare + Fairtrade)」を標榜しているそうで、ふむふむとうなずかずにはいられない。 I bought a small glassware at Majerca, Nakamichi Street, Kichijoji, that sells many artworks made by persons who are generally called handicapped.

ふしぎなやつの正体? A strange shaped crystal

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以前、阿仁鉱山産の黄銅鉱、閃亜鉛鉱、石英からなる結晶標本を紹介し 、石英に埋まるように長さ 1.5 mm ほどの細長い板状で先端が槍のようにとがっている物体が鎮座していることについて報告した。板の途中にコブがついているのもおもしろい。これがいったい何者なのか、わたしの浅い経験からではその正体を断定することはできないが、いくつか考えられることを以下に記す。 I wrote in a previous post that an elongated platy triangular-head object of 1.5 mm length was embedded in a mineral specimen of chalcopyrite and sphalerite from the Ani mine, Japan. I can't tell what it is, but made some speculations below. 細長い板状のふしぎな結晶。色はやや青みがかったテリのある黒色で、途中にこぶがある。写真の視野は約 3.7 mm × 5.5 mm。 The field of view is 3.7 mm × 5.5 mm. 阿仁鉱 Anilite? やや青みがかった黒色の感じからすると、これは輝銅鉱(Cu 2 S)、あるいはその近縁種であるデュルレ鉱(Cu 31 S 16 =Cu 1.94 S)とか方輝銅鉱(Cu 9 S 5 =Cu 1.8 S)かもしれない。こうした鉱物は、東北あたりの銅鉱脈中では、まず鉱液中から黄銅鉱が析出し、その後の酸化作用で輝銅鉱化したものとして産出するのがふつうである。しかし阿仁鉱山では初生鉱物として輝銅鉱がみられ、自形の結晶が観察される場合がある。とくに阿仁鉱(Cu 7 S 4 =Cu 1.75 S)という硫化鉱物がしられており、その名の通り、ここ阿仁鉱山で最初に発見された。 阿仁鉱は産出がレアなので、結晶の形態についてくわしく書かれた資料はなかなか手に入り難い。 「鉱物コレクション:コレクターが語る鉱物の魅力」(監修:青木正博、誠文堂新光社、2014年) という本に、光川寛氏所蔵の阿仁鉱の写真が掲載されていて、色合い、結晶の形に類似点がある。氏の標本は「槍型の偏平柱状

尾去沢鉱山謹製 鉱石・岩石標本 Mineral and Rock Specimens Packaged by Osarizawa Mine

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これは三菱金属鉱業・尾去沢鉱業所(秋田県鹿角市)が作成した岩石・鉱石組標本である。秋田県内の古物商経由で手に入れた。学校名や氏名を記入する欄があることから、おそらく周辺地域の小学校や中学校向けに学習用としてある程度まとまった数を頒布したものだろう。この会社名は1952年(昭和27年)から1972年(昭和47年)まで存在したので、すくなくともこの期間の製品である。ちょっと調べたら花輪の電話局が自動化されたのが1964年(昭和39年)らしいので、記載されている電話番号からしてそれ以前のものかもしれない。こういった組標本は当時国内数社あった科学教材メーカーが盛んにつくったものであるが、鉱業と地学教育の衰えとともに近年ではほとんどつくられなくなってしまった。地方の一鉱山がこうした教育用の組標本をつくった例が他にあったかどうかよく知らないが、これはいわゆる社会貢献としての事業だったのかもしれない。 岩石3種、鉱物8種を収録する。すべて尾去沢鉱山から産出したものなので、鉱物種にかたよりがある嫌いがあるが、郷土の地下資源を学ぶ目的にはじゅうぶんすぎるだろう。ただ水晶(石英)がないのはいただけない気がする。 This is a set of mineral and rock specimens for students produced by Osarizawa Mine, Mitsubishi Metal Mining Company (Kazuno city, Akita prefecture).  This would be made from 1952 to 1964 because of the company's name and telephone number's digits. It was the time when Japanese mining industry and hence earth science education were more active, which would be the reason why a local mine office decided to make this kind of products of educational use. 凝灰岩、泥岩、流紋岩。

古伊万里のカップアンドソーサー Old Imari Cup & Saucer

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色絵小猪口・皿 樹木文 18世紀初頭 Early 18c この手のカップ&ソーサーは18世紀はじめ頃の古伊万里で、海外向け(とくにヨーロッパ向け)の輸出品としてつくられた。かなり量産されたものらしく、絵付けはあまり丁寧でない。ただし器は薄造りで、職人の手際のよさがうかがえる。見込みには色絵で花の文様がえがかれる。当時まだ高級品だったお茶やコーヒー、ココアなどを、これまた貴重な東洋の色絵磁器で飲むというのがあちらの流行りだったらしい。 This kind of color-glazed Imari wares were made in the early 18th century to meet a demand from Europe. The rough drawing implies they were quite mass-produced, but the thin form must be made by skilled craftsmen. A flower pattern is drawn at the bottom. It is said that upper-class European people had tea, coffee, and chocolate with this kind of Asian cup and saucer. カップの口径 top width: 64 mm / 底径 bottom width: 27 mm / 高さ height: 34 mm 皿の径 width: 108 mm 色絵小猪口 海浜図 18世紀初頭 Early 18c 口径 top width: 63 mm / 底径 bottom width: 27 mm / 高さ height: 38 mm 帆掛舟と海岸の松の風景がラフに描かれた猪口。前のにくらべるとややつくりが雑だが、これも同手のものだろう(骨董屋はこれは国内向けのものだと言っていたが)。見込みはやはり花文で、この手の色絵猪口のお約束である。残念ながら受け皿はともなっていない。 A similar cup as above but a little worth in quality. Ships in t