尾去沢鉱山の赤銅鉱 Cuprite from Osarizawa
銅鉱床の酸化帯に生じた自然銅の薄板の表面を赤銅鉱が覆う。赤銅鉱の表面は黒化しているものがほとんどだが、一部は赤色透明な輝きをみせる。サイズは小さいながらも八面体に準ずる結晶もみられる。
A tiny piece of native copper plate is covered with cuprite, which is mostly black but some show translucent red color. There are some octahedral crystals though the size is small.
「南部鉱物標本解説」(原著:南部秀喜、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、1996年)によれば、尾去沢の赤銅鉱は産状から
- 自然銅にともなうもの: これがもっとも多く、樹枝状自然銅を被覆して暗赤色金剛光沢をもつ八面体、まれに六面体結晶が群生する
- 閃亜鉛鉱にともなうもの: 閃亜鉛鉱の周囲が赤銅鉱化したかのような観を呈するもので、塊状または結晶をなすものもある
- 黄銅鉱にともなうもの: ブロシャン銅鉱などの銅の二次鉱物と共生する
に分類される。ここで紹介した標本はあきらかに第1の類型にあたるが、他にも閃亜鉛鉱や黄銅鉱から変化したとおもわれる例があるのが興味深い。一般には、まず天水の侵入により黄鉄鉱が分解して(バクテリアが関与しているとされる)、酸化作用のある硫酸第二鉄を生じ、これが黄銅鉱を分解して硫酸銅をつくり、そしてこれが他のさまざまな鉱物と反応して銅の二次富化鉱床を形成する、とされる。この標本の場合はまず自然銅ができて、それがさらに酸化されて赤銅鉱に変化したのだろう。一方、上に記した類型2や3の場合は、自然銅を経由せずに直接赤銅鉱が生じたのだろう。
Nambu Hideki described that cuprite in the Osarizawa deposits are categorized into three types occuring with (1) native copper, (2) sphalerite, and (3) chalcopyrite. The first one is most common and the present example clearly belongs to this category. In this case native copper first crystalized from copper sulfate aqueous solution in the oxidized zone, and then it altered into cuprite.