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Showing posts from April, 2020

ドライスラーの苦灰石と黄銅鉱 Dolomite and Chalcopyrite from Dreislar

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Dreislar mine, Medebach, Hochsauerlandkreis, Arnsberg, North Rhine-Westphalia, Germany (ドイツ・ドライスラー鉱山) 標本幅 width: 8 cm / 重さ weight: 130 g  ドイツ・ドライスラー鉱山の標本 はひとつすでに紹介済みだが、同じ産地の似たような標本をまた入手した。こちらは薄ピンク色の重晶石の上に苦灰石が、さらにそれと同時かやや遅れて黄銅鉱も多数結晶する。こういった重晶石または苦灰石と黄銅鉱の組み合わせは日本ではほとんどみられないので、ドライスラーや アメリカ・アーカンソー州の産地のもの など、みかけるとつい手元に置きたくなる。ほとんどビョーキと言われてもしかたない。 This is a sample of dolomite and chalcopyrite co-occurring on a barite plate from the same locality as I showed previously . As such a combination is rare in Japan, I can't help getting it in my hands. 裏面は重晶石。 Barite on the back side. 目を凝らすと薄板状の結晶や、V字形にみえる双晶(?)などいろいろ目新しいものがみつかる。ただ結晶面の交わる角度がちゃんと測れてないので、研究の余地はのこる。 I found some crystals that are rare for me such as thin platy ones and a V-shaped penetration twin. As I couldn't measure the angle of crystal surfaces, further investigation will be needed. V字形の貫入双晶?日本では耳付き双晶がよくみられるが、これはちょっと見慣れない形状だ。 A V-shaped twin? A twining with ears is common in Japanese chalcopyrite, but

松竹梅・蛸唐草文 竹節形猪口 Tako-Karakusa Pattern Bamboo-Shaped Cup

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18世紀 18th century 口径 top width: 51 mm / 高さ height: 67 mm / 高台径 bottom width: 38 mm  節をもった竹のように外側が段々になったユニークな形状ののぞき猪口。器の内側の面はなめらか。ろくろで一気にこの形につくったのか、あるいは一度ある程度成形してから、細い粘土のひもを胴に巻きつけてなめらかにならしたものなのか、興味深いところだ。上下に古伊万里の伝統文様であるタコ唐草、真ん中に松竹梅の文様をそれぞれ染付で描いて、さらに一部を赤絵と金彩で上絵付けしている。形状が「竹」でさらに「松竹梅」の文様を重ねている。竹の力強さとタコ唐草とがマッチしているとおもう。タコ唐草の巻き方を見る限り、18世紀中頃くらいの時代はありそうだ。残念ながら縁にカケがあり、共直ししている。 A nozoki -type Imari cup that has a unique shape like a bamboo. The inner surface is smooth in contrast to the outer wavy surface. It is interesting whether this shape was created at once on a wheel or an ordinary cup was made at first and then thin cray strings were rounded on the outer surface. Tako-karakusa (octopus-leg arabesque) and shochikubai (pine-bamboo-plum) patterns are drawn with blue glaze, and red and gold glazes are also used in part. The way of drawing tako-karakusa suggests it was made around the mid 18th century. A defect at the rim has been repaired. 横幅の割に背が高い。縁の裏は四方襷、見込みは五弁花。 It is

麦わら細工 Straw Marquetry

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20世紀前半 Early 20th century 左のたんすは幅 10.5 cm、高さ 12.5cm、右の鏡台は幅 9 cm、高さ 15 cm。 Chest of drawers: width = 10.5 cm, height = 12.5 cm. Mirror: width = 9 cm, height = 15 cm.  ひな祭りの道具か子供のままごと道具か用途はよくわからないが、なかなかよくできたミニチュアの家具である。これらは「麦わら細工」とよばれ、刈り取り後の麦の茎(麦わら、麦稈)を乾燥、染色して平らにのして器物に貼りつけたもの。麦わらは頑丈で光沢があるので、まるで漆を重ね塗りしたかのような効果が得られる。 These are miniature furnitures decorated with straw marquetry (a technique covering a material with dried, colored, and flattened straws), probably used as child's toys or as decoration in Hinamatsuri (March 3rd, Girl's Festival). As straws are firm and lustrous, straw marquetry looks like a lacquer ( urushi ) ware. たんすのほうは金属製の取っ手がついていて引き出しが開く。鏡台にも金具がついているがこちらはダミー。別に隠し扉があって中にモノを入れられる。 The drawer has a metal handle. The mirror's handle is a dummy, but there is a secret slit from which any small item can be stored. 日本の麦わら細工については大田区立郷土博物館編「麦わら細工の輝き」(1999)がくわしい。麦わらを編んで簡単な人形をつくるような遊びは昔から子どもたちのあいだでおこなわれていたが、もっと精緻な手工芸品としては兵庫県の城崎温泉と東京都大田区の大森とが二大産地になる。

のぞき猪口の用途 The use of nozoki-type Imari cups

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江戸時代、伊万里ののぞき猪口は刺し身に添える調味料のいれものとしてつかわれていたことはよく知られるところだが、そのことを裏付けるおもしろい文献をみつけた。 Nozoki -type Imari cups are said to be used as containers for sashimi sauce. I saw an interesting reference that shows how the Edo-period people used such small cups. 三好一「小皿豆皿」(保育社カラーブックス346、1975)は日本のアンティークの小皿を写真主体で紹介する本だが、解説文もおもしろい。そのうち「猪口と差味皿」と題するコラムに当時の猪口の用途についていろいろ書いてあった。まず「猪口(ちょく・ちょこ)」ということばがはじめて文献にあらわれるのは1650年代後半のことだという。1710年頃の献立記録には膾皿の脇に長猪口が並んでいて、猪口はメインの皿に付随する脇役だったことがわかるという。伊万里で小型の猪口が量産されはじめたのがおおむね17世紀後半であるから、これら文献の記録とも合致する。おそらくその頃に食文化が変化して、刺し身(著者は「差味」という漢字をあてる)などのかけ汁、つけダレ入れとして磁器の猪口をつかう習慣が徐々にひろまったのだろう。 I found an description about the use of old Imari small cups in a book, Kozara Mamezara (Small and Tiny Plates), Hoiku-Sha, 1975, written by Miyoshi Hajime. According to his book, the word of choko (small cup) is found in the literature from 1650s. It was recorded in a menu in 1710 that a tall choko was served with a namasu (marinated fish) dish. Choko was always a supporting player t

ソーシャル・ディスタンシング

新型コロナウイルス(COVID-19)の話題でソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)という言葉をよく聞くようになった。要は、公共の場所で人と人の間隔をあけましょう、接触の機会を絶ちましょうということ。で、Social Dance の和訳が「社会ダンス」でないのと同様に Social Distancing の訳は「社会距離」ではないとおもうのだが、どうなのだろう。わたしはこういう関係の専門家でないから認識がまちがっているのかもしれないが、Social Distancing を文字通り直訳すれば「社交上の間隔あけ」であって、もっと日本人っぽい日本語訳は「間隔エチケット」とか「間隔マナー」だろう(あるいは「距離エチケット」とか「距離マナー」)。違和感を感じる。 追記 実際中華圏では「社交距離」という訳をつかっているようだ。漢字の使い方は本家に習うにしくはない。 ソーシャル・ディスタンス Social Distance の訳は「社会的距離」でけっこうだとおもう。