尾去沢鉱山謹製 鉱石・岩石標本 Mineral and Rock Specimens Packaged by Osarizawa Mine

これは三菱金属鉱業・尾去沢鉱業所(秋田県鹿角市)が作成した岩石・鉱石組標本である。秋田県内の古物商経由で手に入れた。学校名や氏名を記入する欄があることから、おそらく周辺地域の小学校や中学校向けに学習用としてある程度まとまった数を頒布したものだろう。この会社名は1952年(昭和27年)から1972年(昭和47年)まで存在したので、すくなくともこの期間の製品である。ちょっと調べたら花輪の電話局が自動化されたのが1964年(昭和39年)らしいので、記載されている電話番号からしてそれ以前のものかもしれない。こういった組標本は当時国内数社あった科学教材メーカーが盛んにつくったものであるが、鉱業と地学教育の衰えとともに近年ではほとんどつくられなくなってしまった。地方の一鉱山がこうした教育用の組標本をつくった例が他にあったかどうかよく知らないが、これはいわゆる社会貢献としての事業だったのかもしれない。

岩石3種、鉱物8種を収録する。すべて尾去沢鉱山から産出したものなので、鉱物種にかたよりがある嫌いがあるが、郷土の地下資源を学ぶ目的にはじゅうぶんすぎるだろう。ただ水晶(石英)がないのはいただけない気がする。

This is a set of mineral and rock specimens for students produced by Osarizawa Mine, Mitsubishi Metal Mining Company (Kazuno city, Akita prefecture).  This would be made from 1952 to 1964 because of the company's name and telephone number's digits. It was the time when Japanese mining industry and hence earth science education were more active, which would be the reason why a local mine office decided to make this kind of products of educational use.

凝灰岩、泥岩、流紋岩。これらは尾去沢地域を代表する岩石。 Tuff, mud stone, and rhyolite. These are typical rocks in Osarizawa district.
石膏、重晶石、黄銅鉱。石膏はややめずらしいが、尾去沢では石膏のみからなる脈があると書いてある。 Gypsum, barite, and chalcopyrite. There were veins almost purely composed of gypsum in the Osarizawa mine.
黄鉄鉱2個、方鉛鉱。 Two pieces of pyrite and galena.
閃亜鉛鉱、胆礬、沈殿銅。胆礬はすっかり脱水して変質している。沈殿銅は坑内水に鉄くずを浸して銅を置換したもの。 Sphalerite, chalcanthite, and cement copper. The latter one was collected from waste water from the adits.

参考

下の写真は秋田大学鉱業博物館に陳列されていたおなじ尾去沢鉱山製の組標本。説明書きには以下のようにある:

「鉱石 - それは大自然の創り出した華麗な芸術作品といえましょう。これをあなたの座右に飾って、そのあざやかな色彩と、妙なるきらめきをご鑑賞ください。お子様の理科標本としても得がたい教材となりましょう。」

秋田大学鉱業博物館所蔵。こちらはやや大型のパッケージで20個入り。箱の柄はおなじ。
This is also a set of mineral and rock specimens produced by Osarizawa Mine, displayed at Mineral Industry Museum of Akita University.