砒四面銅鉱 Tennantite

秋田県大館市 花岡鉱山
Hanaoka Mine, Odate City, Akita, Japan
標本幅 width 10 cm / 重さ weight 267 g

黒鉱鉱体中の晶洞に黄銅鉱と砒四面銅鉱が結晶した。方鉛鉱もみられる。母岩は小粒の黄鉄鉱をふくむ珪質の鉱石で「ゲス板」のようになっている。砒四面銅鉱(Cu6[Cu4(Fe,Zn)2]As4S13)と安四面銅鉱(Cu6[Cu4(Fe,Zn)2]Sb4S13)の区別は一般には難しいとされるが、木下亀城「原色鉱石図鑑」(増補改訂版、保育社、1981)によると、花岡鉱山の黒鉱には砒素に富んだ四面銅鉱が多量に含まれることがある、とのことなので、このようなタイトルにした。くわしい分析をしたわけではない。また入手先の関係上、産地に関しても100%の自信がない。

Chalcopyrite and tennantite crystallize in a cavity in a kuroko (black-ore) deposit with some galena. The silicic base includes many small pyrite cubes. It is generally difficult to distinguish between tennantite and tetrahedrite, but kuroko ores in Hanaoka are said to include arsenic-rich fahlore.

円の直径は 20 mm。 The circle's diameter is 20 mm.

黄銅鉱の結晶標本というのは比較的数が少ないが、四面銅鉱はもっと少ない。日本の四面銅鉱産地は、北海道の手稲、銭亀沢、兵庫県の生野、愛媛の別子あたりが有名かとおもうが、秋田県の尾去沢、そして小坂、花岡などの黒鉱鉱山もかならず名前があがる産地だ。鉱物あつめをはじめてから、図鑑や博物館の石をみては、ほしいなあとずっと思っていたので、手に入ってうれしい。

この標本の場合、四面銅鉱という割には完全な四面体はまれで、いろいろな結晶面をもっている。一見方鉛鉱かとおもう部分もあるが、四面銅鉱はへき開がない。結晶は完全であってほしいが、割れたところがあると鑑定が楽なのはジレンマと言える。黄銅鉱とは色が違うが、四面銅鉱上に黄銅鉱がエピタキシャル成長したり、あるいはその逆もあったりするらしいので、注意が必要だろう。

Chalcopyrite specimens with crystals large enough to distinguish by naked eyes are relatively rare, and fahlore is much rarer. Kuroko mines in Akita prefecture such as Kosaka and Hanaoka are renowned for locality of fahlore in Japan, in addition to Teine and Zenikamezawa in Hokkaido, Ikuno in Hyogo, and Besshi in Ehime. I am happy with having a tennantite sample from Japan after a long-cherished desire. Tennantite in this specimen seems to have various crystal surfaces of tetrahedron, dodecahedron, and cube. It looks like galena, but tennantite does not show cleavage. It is different from chalcopyrite in color, but confusion sometimes occurs because chalcopyrite can epitaxially grow on tennantite and vice versa.

補足

  • 古くは黝銅鉱(ゆうどうこう)と呼ばれていて、これは青黒い銅鉱という意味だ。英語の Fahlore も青白いという意味のドイツ語由来らしい。なんとも言えない灰色っぽい色味が特徴の鉱物である。安四面銅鉱のほうがより黒っぽいので、これを暗黝銅鉱もしくは黒黝鉱といい、砒四面銅鉱のことを淡黝銅鉱と称した(佐藤伝蔵、大鉱物学・下巻、六盟館、1925)。

  • 日本鉱物誌・上巻(第三版、中文館書店、1947)によると、花岡鉱山の四面銅鉱は珪岩中に硫砒銅鉱と共生すること、神山鉱床からは八面体式で直径 3 mm 程度の結晶がでること、堂屋敷鉱床からは四面体式の結晶がでて、ときにその一面が扁平になった六角板状のものがあること、などが書かれている。また尾去沢鉱山からは三四面体(正四面体の各面の三角形が3つに等分されるような十二面体、三方四面体)の砒四面銅鉱の結晶がでるという。これと似た形の結晶はこの標本中にもみられる。

  • 四面銅鉱を硬度で鑑定するテスト。