岩沢の苦灰石 Dolomite from Iwasawa
岩手県北上市和賀町岩沢 岩沢鉱山
Iwasawa Mine, Waga-Cho Iwasawa, Kitakami City, Iwate, Japan
幅 width 55 mm / 重さ weight 122 g
霰石(あられいし CaCO3)のカルシウムの半分がマグネシウムに置き換わって苦灰石(くかいせき CaMg(CO3)2)に変化したもの、といわれている。結晶の形は霰石のそれだが、中身は苦灰石で、こういうのを霰石の仮晶(または仮像とも)という。
岩沢鉱山の主たる鉱石は石膏(CaSO4・2H2O)で、1960年代まで稼行した(新岩手県鉱山誌、東北大学出版会、2003)。鉱床は黒鉱型に分類される。一般に黒鉱型の鉱床では、黒鉱、黄鉱といった銅、亜鉛、鉛などを含む鉱体のそばに、重晶石や石膏の岩体が付随するが、後者がメインの鉱床もあり、岩沢はまさにその例である。
この標本のような球形の苦灰石は、石膏鉱床の周囲の粘土中にみつかった(福島県与内畑および岩手県岩沢両石膏鉱床産ドロマイトについて、岩石鉱物鉱床学会誌、51巻2号、1964)。島根県の松代鉱山も黒鉱型の石膏鉱山で、やはり球形の霰石を産出し、国の天然記念物になっている(国立科学博物館所蔵標本)。ただしこちらは岩沢とは違って、変質せずに霰石の結晶を保っている。石膏はセメントや石膏ボードの原料として重要であるが、いまは化学的に合成されたものを使っており、こうした石膏鉱山はすべて閉山している。
This is said to be a ball of dolomite pseudomorph after aragonite. Iwasawa was a Kuroko-type gypsum mine, which was active until 1960s. Such dolomite balls were found in a chloritic cray layer around the gypsum deposit. Matsushiro mine in Shimane prefecture was also a Kuroko-type gypsum mine and produced aragonite balls, not experienced alteration (an example in National Museum of Nature and Science, Tokyo).