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秋田の中山人形 Nakayama Doll in Akita

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作品 古い時代のもの #1(左):子連れの少女、高さ 16.1 cm #2(右):子を抱いた女、高さ 12.1 cm いずれもネットオークションで入手したものだが、秋田県の横手市(旧平鹿町)でつくられた中山人形でまずまちがいないだろう。左の人形には前の所持者によって付箋が貼られていて、「子連れおつかい」というタイトルがついている。右は「子抱き」と呼ばれることが多い。塗料の質感からして、ともに昭和初期頃かそれ以前の作品とおもわれる。着物の花柄は花巻人形のものと似ているが、これは中山を象徴する文様として今日まで継承されている。どちらも底が粘土でふさがれ、ちょっとへこんでおり、おなじ秋田県の八橋人形の影響が示唆される( 参考画像 を参照のこと)。他にも、粘土のかけら(いわゆるガラ)が中に封入されていて振ると音がすること、独特の蛍光を発するつや出し剤(ニスのようなもの)が部分的に塗られていることなど、古い八橋人形との類似性が認められる(あるいは八橋が中山に似ている、とも言える)。 八橋人形の特徴(底のへこみ、ガラ、蛍光するニス)については 前の記事 を参照のこと。 それなりに古い時代のもの #3(左):角力とり、高さ 9.1 cm #4(右):子を抱いた女、高さ 15.1 cm これらはともに「秋田中山」の刻印が背部に押されている。この刻印がいつから押され始めたのか定かでないが、すくなくとも戦後のこと(昭和30年代?)と推測する。右の「子抱き」は前掲の #2 をひと回り大きくした型で、着物の柄もおなじ。背面に前の所持者のメモ書きがあって、昭和40年に瓦山(樋渡義一のことで当時60才くらい)の作として入手した、とある。底が紙張りであること、前掲の #1 や #2 とは異なるつや出し剤が塗布されていることなど、古い時代の中山人形とはだいぶ趣が違う。左の力士像は作者不明だが、やはり同時期の作のように感じられる。 近年のもの #5(左):天神さま、高さ 10.4 cm #6(右):鉞兎、高さ 12cm 左の天神像はすでに 前の記事 で紹介した。秋田市内の土産店で2010年頃に購入したと記憶する。着物の柄は中山伝統の花弁文様だが、昔のものにくらべるとだいぶすっきりしたデザインだ。右はごく最近手に入...

八橋の土人形 Yabase Clay Dolls

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古来、秋田市八橋(やばせ)地区では土人形づくりがおこなわれていて、子どもの玩具もしくは縁起物として親しまれてきた。八橋の土人形については すでに一度記事を書いた が、ここではその後の収集の成果のうち、明治から昭和初期頃につくられたと考えられる、比較的古そうなものについて書き留めておこうとおもう。なお産地・制作年代等はわたしの推測であって、100%確かなわけではない。 I have shown some clay dolls made in the Yabase area, Akita, Japan, in my previous post . Here I will show my new acquisition, focussing on relatively old products from the Meiji to the beginning of the Showa periods. 目次 作品 考察1: いわゆるガラについて 考察2: ニスのようなものについて 考察3: 底のつくりについて まとめ 補足 訃報 作品 Works 女子 Women #1: 振袖の女(左) 高さ 13.3 cm #2: 羽子板をもつ女と子(右) 高さ 12 cm これらはともに明治期の古作と考えられる。お顔だちはもとより色づかいも似ており、同じ時期に、同じ工房でつくられたことをおもわせる(この頃の八橋には人形をつくる家がすくなくとも3軒はあった)。日本髪の生え際の表現や着物の柄などに堤人形や花巻人形の影響が多少みられるが、それでもどことなく秋田っぽい、いい意味での田舎くささがにじみ出ているようにおもう。全体の調和、素朴さ、ほがらかさはこの時代の八橋人形の真骨頂といえる。どちらも人形内部に粘土のかけらのようなもの(ガラ)が封入されていて、振ると音がする(これについては後述する)。 These dolls were probably made in the Meiji period (the late 19th century). The faces and the colors suggest they might be made at almost the same time b...

酒田の土人形 Sakata Clay Dolls

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招き猫 Beckoning Cat 高さ 19 cm ねこれくとさんのページ やその他ネットの情報をもとにすると、山形県酒田市でつくられた土製の招き猫でまちがいないだろう。大げさな装飾がなく、写実性を重視したデザインだったかとおもうが、でもなんとなくお顔が人間っぽいかんじがして、独特のおもしろさがある。酒田は最上川の河口に位置し、山形県内外との交易で古くから栄えた。この猫さんを店先に置いて、商売繁盛をねがったのかもしれない。 This must be an earthen maneki-neko made in Sakata City, Yamaga, Japan, according to online information sources. The craftsperson would have chosen a realistic design, avoiding a caricatural expression. It is interesting, however, the face looks like a human being. Located at the mouth of the Mogami River, Sakata has been a trading city from old times. This beckoning cat might be displayed at a shop or a office in Sakata, hoping for a good business. 現代の「招き猫」像とは一線を画したデザインだ。制作年代は特定できないが、すくなくとも昭和前期かそれ以前のものだろう。鉄道網が構築され、都会の流行が押し寄せて、地方の風物が失われようとしていた時代だと思うが、東北の田舎にはまだこうした「古き良きもの」が残っていた。 ちょっと前のめり。多少の傷はあるものの、胡粉が全面きれいに塗られていて、すべすべしている。 首輪がかわいい。背中になにか文字(前の所持者の落書き?)が書かれている。 底がちょっとへこんでいて、おなじ東北地方日本海側の秋田の八橋人形との類似性を感じる。厚手の土人形で、持つとずっしり重みがある。 狆(ちん) D...

平清水のやきものと人形 Hirashimizu Earthen Wares and Dolls

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先月、山形市の平清水地区を訪ねた。ここは江戸後期からつづくやきもの産地として有名で、相馬、会津本郷と並んで東北地方の三大窯業地に数えてよいだろう。以下、平清水関連の最近の収集物を紹介する。 Last month, I went to Hirashimizu, Yamagata City, which is known to produce ceramics since the early 19th century and is presumably one of the three biggest potteries in the Tohoku district, ranking with Soma and Aizu-Hongo. Here is some acquisition relating to the Hirashimizu pottery. 1. 湯たんぽ  Hot Water Bottle (Bed Warmer) 高さ 14 cm / 横幅 23 cm 両端が閉じられた円筒形の器で、中にお湯を入れて、冬寒いときに寝床、とくに足のあたりを温める湯たんぽとしてつかったらしい。昭和期になると金属製のものが多く出回ったが、それ以前の湯たんぽはこのような陶製がふつうで、類品は他地域でもみられる。この手の白化粧をほどこした器は平清水ならではのものだ。全体がまるっこくて、見た目にも温かい。古いやきもので俵壺(ひょうこ)というのが16世紀前後の朝鮮にみられるが、瓜二つだ。ちょっと前に秋田の業者から求めた。 Filled with hot water, this cylindrical vessel was used in winter to warm a bed and especially around feet. Ceramic bed warmer was common in Japan before metallic one became in use in the 20th century. Decoration with white engobe is a distinguished feature of Hirashimizu. The rounded shape and texture seem to ...