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Showing posts from December, 2020

秩父の板状方鉛鉱 Platy Galena from Chichibu

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埼玉県秩父市中津川 秩父鉱山 大黒鉱床 Daikoku Deposit, Chichibu Mine, Nakatsugawa, Chichibu City, Saitama, Japan Size: 60 × 47 × 37 mm / Weight: 184 g 秩父鉱山大黒鉱床から産した鉱片で、これも 前回 にひきつづき先日の東京ミネラルショーの戦利品。上の写真で、右側の樹脂光沢を放つ黒色部分が閃亜鉛鉱、左側の白っぽく見えているのが方鉛鉱。その他、少量の石英と茶色い炭酸塩(菱鉄鉱?)とをともなう。大黒鉱床は石灰岩体に熱水が大規模に貫入して生じたので、このように炭酸塩鉱物が散りばめられるのがお約束である。 さてこの標本に特筆すべきは、方鉛鉱の八面体結晶がスピネル式双晶をなして厚板状になり、それらが多数平行連晶しているところ。一部愛鉱家のあいだでは「板状ガレナ(略称:バンガレ)」とよばれ、秩父鉱山の名物とされる。実は 昨年の東京ミネラルショーでも同様の標本 を手に入れたのだが、今回のほうがより結晶が立派で、閃亜鉛鉱もともなっていたので、今年もお迎えした。似たような標本を買い集める、ほとんどビョーキ、、、か。 This piece is also from my recent collection at Tokyo Mineral Show 2020 . Seen in the above photo are sphalerite with resinous luster in the right and specular galena in the left, accompanied by some quartz and brown carbonate that testifies that Chichibu-Daikoku is a skarn-type lead-zinc deposit. It is remarkable that galena crystals are spinel-law twinned to form a large plate. I showed a similar platy galena last year . 三角または六角の面が整然とならんでいる。全体として一枚の板状の結晶を形成

辻村塊 引き出し黒ぐいのみ(高島屋酒器展) Black Sake Cup by Tsujimura Kai

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辻村塊 引出黒ぐいのみ 胴径 78 mm / 高さ 49 mm 歳末恒例の日本橋高島屋・酒器展にいってきた。今回みつけた器のタイトルにある引き出し黒というのは、わたしのうろ覚えによれば、千利休の時代に美濃で確立した手法で、黒釉をかけて簡易な窯で焼いて、赤熱した器を引き出して急冷(場合によっては水冷)する、というワイルドな焼きもののこと。瀬戸黒ともいう。京都の黒楽茶碗と似たような手法だとおもう。急冷することで渋い黒の風合いが得られる、らしい。この作品は、黒の釉薬に嫌味がなく、腰のあたりのカセ具合もよろしく、たいへん気に入った。酒器展の会期は1月5日まで。 I went to Takashimaya, Nihonbashi, to see a special exhibition of  sake -wares. The correct title of the above ceramic cup means a taking-out black sake cup, which uses a technique invented in the late 16th century in Mino district (Gifu prefecture) to make a black glaze better by means of rapid cooling after firing. It is also called seto-guro , and will be similar in technique to raku-yaki in Kyoto. I liked a kind of naturalness of the black glaze of this cup. 作者の辻村塊さんのことはなにも知らなかったのだが、あとでネットでしらべたところ、お父さまの辻村史朗さんがたいへん有名な陶芸家で、海外の美術館にも作品が収められているそうだ。あの荒川豊蔵が生前絶賛した、と書いている記事もあった。ともかく、気に入った器がみつかってよかった。 日本橋のあたりはいわゆるアンテナショップがいっぱいある。そのうちのひとつ滋賀のショップに立ち寄って鮒寿司を買った。鮒寿司は「臭い」とよくいわれるが、いまだかつてこれを臭いとおもったことがな

小坂鉱山の鉱物(池袋ショー 2020) Minerals from Kosaka Mine

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東京の新型コロナウイルス新規感染者数が過去最大となった先週末、池袋で開催された 東京ミネラルショー(通称:池袋ショー) にいってきた。コロナ禍の渦中で、海外のディーラーの多くが不参加だったり、事前予約制だったこともあり、会場の混雑は例年ほどではなかったようだ。以下、戦利品のうち、秋田県の小坂鉱山産の2点を紹介する。 I went to Ikebukuro to see Tokyo Mineral Show 2020 last weekend when the daily number of people in Tokyo infected with coronavirus came to the maximum. People in the site were not so many partly because most of the dealers from abroad didn't come. I will show two pieces from the Kosaka Mine, Akita, from those acquired at the show. 水晶 Rock Crystal 秋田県鹿角郡小坂町 小坂鉱山 内の岱鉱床 Uchinotai Deposit, Kosaka Mine, Kosaka Town, Akita, Japan Size: 92 × 73 × 45 mm / Weight: 111 g 最長 2.5 cm の水晶が放射状に生える。基盤部分はいわゆるヌケガラ状石英のようで、表面には黄銅鉱の結晶が散らばっている。黄銅鉱は表面が変質して茶色っぽい。以前紹介した 尾去沢鉱山のヌケガラ石英 にも変質した黄銅鉱が多数くっついており、なにか共通性を感じる。 Quartz crystals to 2.5 cm in length grow radially from a base that will be a quartz pseudomorph after baryte over which tarnished chalcopyrite are scattered. A common characteristic was seen in a quartz pseudomorph from t

硫塩鉱物を知りたい

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硫塩鉱物大集合。 鉱物の本などをみると「硫化鉱物」と「硫塩鉱物」とが独立に扱われている場合があるが、このちがいはそもそも何なのか?こういう分類をしてなにがうれしいのか?ちょっとしらべてみた。 参考にしたおもな本・記事は: Sulfide Mineralogy (Mineralogical Society of America Short Course Notes vol.1, ed. Paul H. Ribbe, 1974) の第1章と2章。 加藤昭「主要鉱物各説」(無名会、2017年)、同「硫化鉱物読本」(鉱物読本シリーズ No.4、関東鉱物同好会編、1999年)。 David J. Vaughan and Claire L. Corkhill, Mineralogy of Sulfides (Elements, Vol.13, pp.81-87, 2017) Wikipedia の Sulfosalt Mineral の項目。 うわつらをかいつまんだだけなので、生半可な解釈があったらコメントをください。 金属の硫化物 金属元素と硫黄とが結合した鉱物を硫化鉱物という。加藤昭「主要鉱物各説」によると、このうち原子どうしの結合が構成元素の原子価(原子から伸びる腕の数)の概念で説明可能なものを「 単純硫化鉱物 」とよぶ。たとえば 方鉛鉱 Galena: PbS = Pb 2+ + S 2- 輝銅鉱 Chalcocite: Cu 2 S = 2Cu + + S 2- 黄鉄鉱 Pyrite: FeS 2 = Fe 2+ + (S 2 ) 2- など。硫化鉛は方鉛鉱一択だが、銅の硫化物にはもうひとつ銅藍(Covellite: CuS = Cu 2+ + S 2- と解釈可能)がある。黄鉄鉱(または白鉄鉱)は二硫化物に分類され、硫黄原子が2個結合した二硫化物イオンと鉄とが結合した結晶、と理解できる。いわゆる硫化鉄(トロイライト Troilite: FeS や Fe 2 S 3 )は天然ではほとんどあるいはまったく産出しない。 実際の原子間の結合、結晶構造がどうなってるかはそんなに簡単ではない。ともかく組成上「単純に」解釈できる、というだけの話。 周

御徒町でお買い物

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東京都のJR御徒町駅の南東側一帯は、言わずとしれた貴金属、宝石、宝飾品の問屋街である。わたしの興味に沿うような店はほとんどないのだが、先週末、買い物がてらちょっと寄ってみた。 アフガンブラザーズ ここはアフガニスタンやパキスタンあたりの鉱物標本を扱っている。今回は、再来週の池袋ショーの準備なのか、店員さんが鉱物標本をホットボンドでアクリル板に固定する作業をしていて、できた製品がたくさん店頭にならべてあった。つぎの2点を手に入れた。 ファーデン・クォーツ Faden Quartz Waziristan, Pakistan (パキスタン、ワジリスタン) Size: 64 × 30 × 7 mm 真ん中に白い筋があって、そこから両側に石英の板状結晶が成長している。水晶の日本式双晶でこういう白い筋がはいっているのを見たことがあるが、それと似ている。でも双晶というわけではなさそうだ。 ジルコン Zircon たぶん Astore Valley, Gilgit-Baltistan, Pakistan (パキスタン) Size: 40 × 30 × 21 mm 径 1.5 cm までの赤ブドウ色のジルコン結晶が数個、黒雲母を主体とする母岩に埋まっている。結晶にダメージがあり、値段はお手頃。おなじような色合いで、おそらく径 4 〜 5 cm に達するとおもわれる単結晶の破片もおなじぐらいの値段で売られていた。もしこの大きさで結晶が四周完全だったら相当の値段がつくだろう。 ラピスラズリ Lapis Lazuli アフガニスタン Size: 65 × 50 × 40 mm これは随分前に入手したもの。ほぼ全面研磨されていて、黄鉄鉱のつぶつぶが散らばる。アフガニスタンはラピスラズリの原石の産地として古来有名で、堀秀道「楽しい鉱物図鑑」によると、シルクロードの西半分は「ラピスロード」と言ってもいいくらい、古来中東〜ヨーロッパではこの石が珍重されたという。アフガンブラザーズは、店内商品総重量の半分くらいはラピスラズリなんじゃないか、と思えるくらい大量に原石やその加工品を陳列している。あとこの店はアフガニスタンの遺跡から出るローマンガラスの品揃えも豊富。 信一商事(11Mineral) ここは中国産の