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Showing posts from June, 2024

氷長石脈中の閃亜鉛鉱 Sphalerite in Adularia Vein

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Ani Mine, Kita-Akita, Akita, Japan(秋田県北秋田市 阿仁鉱山) 89 × 76 × 33 mm / 187 g 最大径 3 cm 近い閃亜鉛鉱の結晶標本で、方鉛鉱と多少の黄銅鉱をともなう。結晶面がはっきり出ていて、条線が力強い。特筆すべきは多量の氷長石をともなうところ。石英の微結晶も散りばめられるが、ここではむしろマイナーである。菱刈や佐渡などの金銀鉱脈では脈石に氷長石を含むのが普通だが、日本の銅・鉛・亜鉛鉱床でこのように顕著な量の氷長石を晶出するのは、阿仁鉱山以外には知られていないんではなかろうか。ともかく、結晶の配合のバランスがよく、自然の美を感じさせる標本である。 Sphalerite crystals of nearly 3cm in size are perched on an adularia-rich bed with galena and minor chalcopyrite. Adularia is common in gold-silver mines like Hishikari and Sado, but Ani is perhaps the only exception in Japan that a copper-lead-zinc deposit is rich in adularia. I think this is a well-balanced piece showing beauty of nature.  参考 以前紹介した阿仁の氷長石結晶標本 。 動画 movie

ミネラフロントを見学 Minerafront Museum

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ミネラフロント SITE 1 のエントランス。 昨年(2023年)5月に開館した「 ミネラフロント 」を見学する機会を得た。これは東京大学工学部と千葉工業大学とが共同で企画・運営している一種の博物館で、おもに日本の金属鉱山の鉱石・鉱物標本を展示している。場所は東京都文京区の東大工学部3号館の4階で、SITE 1 と SITE 2 という2つの部屋にわかれている。前者は平日であればだれでも見学できる。後者は月1回程度、不定期に開館している。直近だと2024年7月22日、8月6・7日の午後が訪問可能で、その後は未定。 SITE 2 には日本各地の鉱石・鉱物標本が展示されている。とくに細倉、尾去沢、松峰、釈迦内、足尾、神岡の各鉱山の標本はかなり充実している。国立科学博物館みたいな網羅的な展示ではないが、逆にひとつの産地のいろいろな鉱物種が並んでいて見ごたえがある。本質的なことではないが、什器や照明が立派で、標本をよく引き立てている。半分くらいの標本のラベルには寄贈者の名前がはいっているが、篤志も報われるというものだ。写真撮影不可なので詳細を伝えることはできないが、鉱物ファンならちょっと足を止めたくなるような標本がいくつもある。たとえば足尾の蛍石、燐灰石、黄銅鉱はたいへん美麗だし、多数ある細倉の標本も、蛍石をともなう亜鉛・鉛鉱石、様々な晶相をみせる方解石の他、輝安鉱や斑銅鉱などは小品ながらかなりめずらしいものとおもわれる。 SITE1 は鉱石・鉱物標本の概要的な展示と、日本近海の海底に眠る金属資源に関する展示、最近の研究成果の紹介からなる。「しんかい6500」で試料を採取する映像が興味深い。こちらは撮影可、とホームページに書いてあったので、以下に写真をいくつか載せる。 I visited "Minerafront", the museum of mineral resources frontier, established in May 2023 by Faculty of Engineering, University of Tokyo, and Chiba Institute of Technology. It is located on the 4th floor of Engineering Building 3,

太良鉱山の方鉛鉱 Galena from Daira Mine

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300-Shaku Deposit, Daira Mine, Fujisato Town, Akita Prefecture, Japan 秋田県山本郡藤里町 太良鉱山 300尺𨫤 Size: 10 × 6 × 6 cm / Weight: 1.35 kg 世界遺産にも指定されている白神山地の秋田県側、藤琴川上流に位置する太良(だいら)鉱山産の方鉛鉱のかたまり。ごく少量の閃亜鉛鉱をともなう。鉱脈を充填する方鉛鉱の富鉱部を採取したと考えられるもので、自形の結晶面はほとんどみられない。しかし結晶はかなり粗粒で、最大径 2 cm に達するものがある。劈開面がピカピカ輝いている。付属したラベルによれば、この標本は昭和29年(1954年)に「300尺𨫤(ひ)上3 東1位 切上り 10 m」から採取された。 A piece of galena with minor sphalerite from the Daira Mine, Akita, that was located near the upper part of the Fujikoto River and at an entrance to the Shirakami Mountains listed as a World Heritage site. There are few automorphic crystals, probably collected from a galena-rich part of a solid vein. The crystal reaches 2 cm in size, showing shining cleavage faces. The label says that it was mined in 1954 at 10 m above the East 1 district of the third upper level in the 300-shaku vein. とくに粗粒な部分。 小さな晶洞にみられる自形結晶。円の直径は約 10 mm。 太良鉱山は、能代市二ツ井から藤琴川をさかのぼること 25 km、藤琴の町からでも 15 km の深い山あいに位置するが、その歴史は古く江戸期以前にさかのぼる。古文書や口伝によ

孔雀石と珪孔雀石 Malachite and Chrysocolla

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Size: 94 mm × 65 mm × 45 mm 初夏の東京の風物詩、東京国際ミネラルフェア(新宿ショー)で入手した、コンゴ民主共和国の南部、カタンガ州産の塊状の孔雀石(マラカイト)。層状に沈殿して全体に丸みを帯びた形状に成長したもので、珪孔雀石(クリソコラ)の殻で覆われている(内部にも薄い珪孔雀石の層が数枚はさまっている)。表面は磨かれ、一部切断もされていて、色鮮やかな一種のアート作品のようになっている。 A massive piece of malachite mined from the Katanga District, DR Congo, was my purchase at the Tokyo International Mineral Fair, which has been thought as an event reminding Japanese mineral collectors of the beginning of summer. Malachite precipitated to create concentric layers, and the outer shell as well as some thin layers inside are light-blue chrysocolla. Polished and chopped to show the textures of the constituting minerals, it can be said as a nature's artwork. Mindat.org に掲載の類似品(たとえば これ )の産地はルブンバシ(Lubumbashi)近郊の L’Etoile du Congo Mine (Star of the Congo Mine) のようだ。 このディーラー はモーリシャスに本拠地があって、おもにアフリカの石を販売しているようだ。うらやましい。Malacola というなまえで売り出していたが、この愛称は浸透しているとはいいがたい。 The mineral dealer who sold this piece bases itself in Mauritius and mainly trades A