堤人形:花笠踊り Tsutsumi doll: A Hanagasa Dancer
東京・有楽町で月2くらいでやっている大江戸骨董市にて、これは見事な堤人形だと感じ入り購入。わたしは古人形についてまったくの初心者で見方もおぼつかないのだが、人物の造形とバランス、花笠をもつ手の躍動感、表情、華やかな色づかい・・・ともかくすべてがすばらしいとおもう。製作年代は江戸後期と言ってまちがいないだろう。ただの土人形と言ってしまえばそれまでだが、西の伏見、東の堤と言われるだけあり、江戸文化の高度の結実と言っていいくらいの品格がある、、、とおもう。
I thought in the Oedo Antique Market, held twice a month in Yurakucho, Tokyo, that this must be a superb vintage Tsutsumi doll. Though I am just getting started to collect old dolls, the face, coloring, movement of the hands with the flower hats (hanagasa), body balance, and simply speaking, everything is excellent. It was doubtless made in the late Edo period. It is a mere clay (ceramic) doll, but this old Tsutsumi possesses a certain dignity that was only possible during the height of Edo culture.
現在、花笠踊りが盛んなのは山形県内だが、江戸後期頃は仙台でもおこなわれていたのだろう。山形の「花笠音頭」は大正期に歌われ始めたらしいが、花笠を手にして踊る風習自体はもっと昔からあったとおもわれる。両手に花笠を手にした女性像は東北の古人形ではよくある題材のようだ。大江戸骨董市でももう一体売られていた。
Hanagasa (flower hat) Dance is popular in Yamagata (see the website of the Hanagasa Festival). I guess it was also popular in Sendai in the Edo period, because the motif of a woman dancing with hanagasa in her hands is not rare in old Tsutsumi and other Tohoku dolls. I saw another hanagasa doll in the Oedo Antique Market.
参考
下の写真は1991年に東北福祉大学・芹沢銈介美術工芸館でおこなわれた展覧会に出品された「花笠踊」。「東北の古人形 三春・堤・相良・花巻・鴻巣」(芹沢長介 編、1991年)より転載。おなじ堤人形だが、こちらは片足をあげていて躍動感がある。
The following example is from a photo book published for a special exhibition at Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum in 1991.
こちらは雑誌「民藝」1999年3月号の表紙を飾った米沢の相良人形。踊りの動きの一瞬を見事にとらえている。
This is another example of Sagara doll made in Yonezawa, Yamagata. It depicts a moment in hanagasa dance.
追記
1989年(平成元年)に仙台市博物館で開かれた特別展の図録「堤人形の美」の解説(見城敏子・小井川百合子、1989年)によると、江戸期の堤人形の多くは当時の歌舞伎や浮世絵から題材をとったらしく、この「花笠踊り」も歌舞伎の演目「娘道成寺」の中の舞の場面を写しとったものだという。江戸期の人々にとって歌舞伎がどういう存在だったのかいまいち想像がつかないが、こういう人形をつくってそれが売れたということは、江戸から遠く離れた仙台でも相当の人気を誇ったのだろう。 (2023年6月3日)