古い堤人形 Old Tsutsumi Clay Doll
宮城県仙台市でつくられた土人形で堤(つつみ)人形と呼ぶ。古美術業者が多数集合する催しでたまたま出会った。巨大な魚を担ぐ童子の表情に惹かれた。こういう古い土人形は塗りが一部はげたり傷がついたりしていかにも古びたものが多いが、この人形にはそうした汚れを感じさせない魅力があり、はじめてお金を出して手に入れようとおもった。
Tsutsumi doll was made in Sendai City, Miyagi, Japan. I met this doll at an antique fair. An old clay doll typically looks dirty as the paint has chipped or has been scratched. I bought a vintage clay doll like this for the first time because the face of a boy carring a big red fish was so attractive that I didn't feel it was oldish.
地元仙台の業者が言うには江戸期の作。明治以降のものとは顔料が違うという。堤人形の古作にみられる赤色は蘇芳色と称され、この人形の鯛(または鯉)の赤もそれに該当するだろう。時代を経ることで、ちょっとたとえが悪いが、血が固まったときのような独特の赤色を呈している。
The antique dealer said it was made in the mid or early 19th century, judging from the pigment's quality. The red color in old Tsutsumi dolls is said to be special (the suo color), and the fish's color will be so. I think it is like solidifying blood's color.
参考
現在も2軒が堤人形の伝統をひきついでおり、宮城県の伝統的工芸品に指定されている。
仙台市博物館収蔵の東北の土人形。岩手県花巻市の花巻人形、山形県米沢市の相良人形とともに東北の三大土人形のひとつとされている。また西の伏見人形、東の堤人形とも称されており、昔から美術的評価が高い。
日本郷土人形研究会が公開している日本各地の土人形のコレクション。堤人形3体と堤系人形5体の写真をみることができる。
追記
1989年(平成元年)に仙台市博物館で開かれた特別展の図録「堤人形の美」の解説(見城敏子・小井川百合子、1989年)によると、この人形は「鯉つかみ」というモチーフで、鯛ではない。江戸期の歌舞伎の演目からとられたもので、当時相当はやったらしい。坂田金時(金太郎)が巨大な鯉をつかまえるという話ともあいまって、最終的に童子が鯉をかつぐ、という土人形に昇華し、これを飾ることで子どもの成長をねがった、というのが実情だろう。 (2023年6月3日)