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Showing posts from May, 2023

堤人形:花笠踊り Tsutsumi doll: A Hanagasa Dancer

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19世紀 19th century 高さ height: 18.3 cm 東京・有楽町で月2くらいでやっている大江戸骨董市にて、これは見事な堤人形だと感じ入り購入。わたしは古人形についてまったくの初心者で見方もおぼつかないのだが、人物の造形とバランス、花笠をもつ手の躍動感、表情、華やかな色づかい・・・ともかくすべてがすばらしいとおもう。製作年代は江戸後期と言ってまちがいないだろう。ただの土人形と言ってしまえばそれまでだが、西の伏見、東の堤と言われるだけあり、江戸文化の高度の結実と言っていいくらいの品格がある、、、とおもう。 I thought in the Oedo Antique Market, held twice a month in Yurakucho, Tokyo, that this must be a superb vintage Tsutsumi doll. Though I am just getting started to collect old dolls, the face, coloring, movement of the hands with the flower hats ( hanagasa ), body balance, and simply speaking, everything is excellent. It was doubtless made in the late Edo period. It is a mere clay (ceramic) doll, but this old Tsutsumi possesses a certain dignity that was only possible during the height of Edo culture. 日本髪の生え際の表現などは堤らしさがよく出ているとおもう。下半身と両花笠とに蘇芳(赤の顔料)がふんだんにつかわれる。古堤人形を指して、浮世絵を立体化したかのようだ、との評があるがまさにそのとおりだ。 I think the style of the hairline is characteristic in Tsutsumi dolls. The color of two flower hats and

小幡人形 Obata Doll

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高さ height: 12.5 cm 鮮やかな水色の着物を着た少年がうさぎを抱いている。よくある郷土人形に比べてお顔がとてもリアルに描かれているとおもう。からだがちょっと斜めに傾いているがそれがまたリアルだ。いっぽうでうさぎの顔はかなりデフォルメされていて、その対照がおもしろい。うさぎは多産で昔から縁起物とされていて、古伊万里の図柄でも定番だ。なにか厄除けとか招福などの意味がこのうさぎの顔にこめられているのかもしれない。 A boy wearing a sky blue kimono holds a rabbit. The facial expression is realistic compared to other Japanese folk dolls. The doll's appearance is made more realistic by the body's slight slant. It is interesting that the rabbit's face is quite deformed. Since rabbits have numerous babies, they have long been regarded as a lucky animal. I guess people found meanings of warding off evils and inviting good luck in the rabbit's face. ほっぺが赤くてかわいい。着物の柄も後ろまでていねいに描いており、全般的に手が込んでいる。 The face with red cheeks is attractive. The kimono pattern is finely drawn even in the back. この土人形は滋賀県五個荘町(現・東近江市)小幡在住の細居源悟氏の作品で、製作地の名前から小幡人形とよばれている。昔はこういった人形のことを「でこ」と言ったので「小幡でこ」とも称される。小幡でこの歴史は古く、18世紀はじめ頃にさかのぼる。創始者の細居安兵衛からいまの源悟氏まで、約300年間、九代にわたって伝統が受け継がれているというから大

古い相良人形 Old Sagara Doll

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19世紀 19th century 幅 width: 14 cm / 高さ height: 7.5 cm 船の上で子どもが二人微笑んでいるこの土人形は、山形県米沢市でつくられたもので、相良(さがら)人形の名でよばれる。いわゆる宝船に類した縁起物だろうか。ずいぶん古びていてはっきりいってボロボロだが、それ以上にこの表情と仕草とに和む。驚くほど多くの顔料がつかわれている。船の色は 前に紹介した堤人形 と同様の蘇芳(すおう)色で、江戸期の作風を感じる。船首には金泥が施される。着物の色も華やかだ。東北の他の古人形と比較した研究によると、相良人形には苔のような緑色が多用される傾向にあり、これは緑青(ろくしょう; 天然には孔雀石)の色だという(菊地和博、1989年)。この人形では左側の童子の着物が緑青である。 This clay doll, known as Sagara doll, was made in Yonezawa City, Yamagata, Japan. Though the doll is quite old, I was very impressed at the children's face and movement. Children on a boat is a common motif in Sagara dolls. Many colors can be found such as suo (sappanwood) red at the hull, goldish black at the bow, and moss green at the kimono , which was created by the verdigris (malachite) in Sagara dolls. 優に150年は経っていると考えられる古人形で、随所に汚れや塗料の剥げ落ちが見られるが、この童子の表情と仕草の魅力はそれらを補ってあまりあるものがある。 彩色はないものの後ろ姿も愛らしい。絶妙な造形である。 土はオレンジ色に焼けている。船の部分の塗料はかなり剥げている。 18世紀末、成島焼の創業に深く関わったことで知られる相良清左衛門厚忠

古い堤人形 Old Tsutsumi Clay Doll

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19世紀 19th century 高さ 10.5 cm / 幅 11.3 cm 宮城県仙台市でつくられた土人形で堤(つつみ)人形と呼ぶ。古美術業者が多数集合する催しでたまたま出会った。巨大な魚を担ぐ童子の表情に惹かれた。こういう古い土人形は塗りが一部はげたり傷がついたりしていかにも古びたものが多いが、この人形にはそうした汚れを感じさせない魅力があり、はじめてお金を出して手に入れようとおもった。 Tsutsumi doll was made in Sendai City, Miyagi, Japan. I met this doll at an antique fair. An old clay doll typically looks dirty as the paint has chipped or has been scratched. I bought a vintage clay doll like this for the first time because the face of a boy carring a big red fish was so attractive that I didn't feel it was oldish. お顔はつやつやしている。繊細な絵付けである。首のかしげ具合が絶妙である。担いでいる魚は鯛という説と鯉という説があるようだ。後者は金太郎(坂田金時)の伝説に由来する。いずれにしろ縁起物で、古い土人形によくみられる題材である。 A motif of a boy carrying a big carp came from a legend of Kintaro , and is traditional in old clay dolls. The fish might be tai (sea bream). 裏側は彩色がない。 No paint on the back side. 鉄分のある土だったようでレンガ色に焼けている。 The clay is baked red in color. 地元仙台の業者が言うには江戸期の作。明治以降のものとは顔料が違うという。堤人形の古作にみられる赤色は蘇芳

白岩焼の小さなすず Small Sake Bottle from Shiraiwa

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19世紀 19th century 高さ height: 14.2 cm / 胴径 width: 9.5 cm 骨董商によると産地は特定できないものの、東北民窯の手で、江戸期はじゅうぶんある古いものだという。わたしの見立てでは、おそらく秋田県の白岩焼だろう。高さ 14 cm あまり、容量は 1 合半(270 ml)。このような小さなサイズのすず(徳利の古い呼び名)は東北あたりでは珍しい。 A small sake bottle probably produced in Shiraiwa, Akita prefecture. A shop owner couldn't say the exact locality, but it was made in the Edo period (mid or early 19th century). I think this small size (about 270 ml in volume) is rare in old Tohoku potteries. 高台は碁笥底タイプ。細工には繊細さを感じる。以前にも述べたが、褐色の下釉と青白いなまこ釉のやわらかな調和は、北国の土と雪をおもわせる。 左は 以前紹介した一升すず (高さ 28 cm)。土や釉薬のみならず、形状も似ていて、産地は同じものと考えられる。 渡辺為吉が昭和8年(1933年)に著した「白岩瀬戸山」 によると、白岩焼の窯元のひとつである勘左衛門窯(ハ窯)が明治12年と明治15年に製造した陶器の数が資料として残っている。以下に白岩の主力製品だったすり鉢、かめ、すずの生産数を同書から引用する: The following table shows the number of Shiraiwa Kanzaemon pottery's products in 1879 and 1882, reproduced from Shiraiwa Seto-Yama written by Watanabe Tamekichi in 1933. 品名 product 明治12年 1879 明治15年 1882