細倉鉱山の蛍石 Fluorite from Hosokura

Hosokura Mine, Uguisuzawa, Kurihara City, Miyagi, Japan (宮城県栗原市鶯沢 細倉鉱山)
Size: 120 × 105 × 55 mm / Weight: 940 g

日本有数の鉛・亜鉛鉱山だった細倉鉱山の鉱石の破片。黒っぽい方鉛鉱・閃亜鉛鉱、および白っぽい蛍石(フローライト)が交互に沈殿・結晶化して縞状の鉱石を形成した。とくに適当な断面で切ると同心円状の縞々があらわれるものを輪鉱(ring ore)と呼び、この標本もそれに該当するだろう。この独特の見た目に加えて、そもそも鉱脈型の金属鉱床で蛍石を多量に産出するところはそれほど多くはないので、われわれ愛鉱家としてはちょっと見過ごすことのできない産物である。

蛍石は透明感のある白色で、紫外線長波で青紫色に蛍光する。何かを中心核にして雪だるまが大きくなるように成長した節がある。そのもっとも外側の殻は蛍石で、表面はもこもこした腎臓状もしくはぶどうの房状の晶癖をしめす。細倉の蛍石は木下亀城「原色鉱石図鑑」(増補改訂版、保育社、1962年)でも紹介されているが、その蛍石は緑色である。同書には大分県尾平鉱山や兵庫県明延鉱山の同様の輪鉱の標本も掲載されている。

A kind of ring ore mainly composed of white fluorite and black sphalerite and galena, which is a famous natural product from the Hosokura lead-zinc mine. It is attractive enough as fluorite is not very common in hydrothermal veins in Japanese metal mines. Fluorite is translucent and becomes bluish purple under a UV light. The outermost crust is fluorite that shows a botryoidal surface texture. Similar ring ores from the Obira mine, Oita, and the Akenobe mine, Hyogo, are shown in a Japanese book (Kameki Kinoshita, "coloured illustrations of economic minerals", Hoikusha, 1962).

晶洞に面する蛍石は表面がもこもこしている。破断面に黒い輪っかがいくつかみられるが、3次元的にどういう形状をしているのか、その形成過程もふくめて謎である。
蛍石は紫外線を当てると青紫色に光る。UVライトの照射範囲が狭いだけで、最外殻の白色部分もおおむね蛍石である。その他の白色部分で蛍光しないところは石英。縞々の「不整合」がみられるのがおもしろい。