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Showing posts from December, 2022

末広形の小猪口2種 Two Small Imari Cups

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これから紹介する、直立する高台から斜めに末広がりに口が開くような形の猪口を俗に広東(かんとん)碗形と呼ぶ。 These Guangdong-type old Imari cups are characterized as a broadening shape toward the top with a vertical bottom part. 染付 小猪口 捻文 Twist Pattern 18世紀 18th century 口径 top width: 72 mm / 高さ height: 51 mm / 高台径 bottom width: 45 mm 生掛け焼成(素焼きを省略して施釉する焼成法)をおもわせる温かみのある白磁に、濃淡2種のダミで立ち昇る煙が風にたなびくような文様を描く。モクレンの花びらのようにもみえる。古伊万里の文様としてはよくあるもののようだが、一体何をデザインしたものなのかよくわからない。以前紹介した「竹矢来」の猪口(一番下の写真)といろいろと共通点があるので、時代的にもおなじくらいのものかなと想像する。 The twist pattern painted with dark and light blues is relatively common in old Imari wares. It looks like a flower (morning glory or magnolia?). The background off-white glaze suggests that it was baked without an unglazed baking process. It is similar to another bamboo-fence cup (see a picture at the end) and I guess they were made at the same age. 胎土はオレンジ色に焼けている。ふつうの古伊万里とは焼け方がちょっと異なるのは生掛け焼成だからか、あるいは有田の土ではなくよその窯の製品だったからかもしれない。いわゆる「くらわんか手」の雰囲気もある。 染付 小猪口 花文 Flower Pattern 19世紀 19th c

尾去沢鉱山の閃亜鉛鉱と方鉛鉱 Sphalerite and Galena from Osarizawa

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Osarizawa Mine, Kazuno City, Akita, Japan (秋田県鹿角市 尾去沢鉱山) Size: 150 × 105 × 70 mm / Weight: 1.8 kg 尾去沢鉱山は閃亜鉛鉱の結晶、とくに褐色透明な「べっこう亜鉛」の結晶を多産したことでしられる。購入先の店主によれば閃亜鉛鉱の産地としては世界でも五本の指にはいってしかるべきだという。この標本の閃亜鉛鉱も、結晶面によって多少の差はあるが照りがよく、透明度も高い。なによりサイズが大きく、幅 5 cm に達する結晶も鎮座する。閃亜鉛鉱の周囲は方鉛鉱の結晶で埋め尽くされていて、これも見どころがある。骸晶が発達しており、結晶の成長速度が速かったことを示唆する。また結晶化終了後に銅を含んだ溶液が侵入したのか、方鉛鉱はちょっと緑色にくすんでいる。少量の黄銅鉱も付着する。閃亜鉛鉱にはそうした「汚れ」があまりつかないのは 以前紹介した標本 と同様である。 Osarizawa is known as a famous locality of brown transparent or translucent sphalerite, bekko-aen (tortoiseshell zinc) in Japanese. The dealer who sold me this piece said Osarizawa could be counted among the five best localities of sphelerite in the world. The sphelerite crystal is translucent and the biggest one is over 5 cm in size. The surrounding galena is skeletal in part, and is tarnished probably because of an inflow of copper-containing solution after crystalization. It is interesting that sphalerite is relatively clean, as another piece from Osarizaw

茨城自然博物館「ときめく石」展 Exciting Minerals: Exhibition at Ibaraki Nature Museum

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茨城県自然博物館 にて開催中の企画展「ときめく石〜色と形が奏でる世界」を見に行った。 本間ますみ によるペットボトルアート。水晶内部のクラックのようすがよく再現されていて、小人になった気分になる。 世の博物館というのは動植物や古生物の展示がメインだ。なんといっても生物界は種類が多いし、人間も生物の一種で親近感があるし、また生命の誕生や進化はそれ自体興味深い。いっぽう石ころなんてものは足が生えているわけでもなくただそこにあるだけで、おもしろみが少ない。われわれの身近にある鉱物の種類なんてせいぜい数十種類くらいだろう。こういう世の趨勢は致し方ないが、茨城県自然博物館はそれでもまだ「石」に対する愛を多少はもちつづけている施設であり、今回のような特別展の開催にはある種の良心をかいまみることができる。 以下はわたくし的にときめいた石で写真に収めたもの。 荒川の蝶形方解石双晶 Calcite butterfly-shaped twin from Arakawa Mine, Daisen City, Akita, Japan 秋田県大仙市 荒川鉱山 透明度の高い方解石の板状結晶が2枚結合した双晶。先の尖った槍状の結晶が異常に扁平に成長したもので、c軸がほぼ90度でまじわっている。かなりめずらしい晶癖だが、わたしが調べた限り最初に文献に出てくるのが1935年(「日本鉱物資料」続 第1巻、昭和10年)だったので、荒川鉱山の歴史でいうとかなり末期(昭和初年頃?)に産出したものと思われる。茨城自然博物館には三菱鉱業の技師だった南部秀喜(1897-1972)の鉱物標本が多数収められており、これもそのひとつかもしれない。南部が生野鉱山に就職したのが1917年(大正6年)で、荒川も三菱系列の鉱山なので、ちょうど鉱物収集熱に火がついたときに産出したとあれば、彼が職権(?)をつかってでもそれを手に入れたとしても自然な話である。 参考 : 堀秀道「南部秀喜さんと鉱物標本」(地学研究 vol.24 no.1〜6、1973年) 佐渡の白鉄鉱と重晶石 Marcasite and Barite from Sado Mine, Aikawa, Sado City, Nigata, Japan 新潟県佐渡市相川 佐渡鉱山

細倉鉱山の蛍石 Fluorite from Hosokura

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Hosokura Mine, Uguisuzawa, Kurihara City, Miyagi, Japan (宮城県栗原市鶯沢 細倉鉱山) Size: 120 × 105 × 55 mm / Weight: 940 g 日本有数の鉛・亜鉛鉱山だった細倉鉱山の鉱石の破片。黒っぽい方鉛鉱・閃亜鉛鉱、および白っぽい蛍石(フローライト)が交互に沈殿・結晶化して縞状の鉱石を形成した。とくに適当な断面で切ると同心円状の縞々があらわれるものを輪鉱(ring ore)と呼び、この標本もそれに該当するだろう。この独特の見た目に加えて、そもそも鉱脈型の金属鉱床で蛍石を多量に産出するところはそれほど多くはないので、われわれ愛鉱家としてはちょっと見過ごすことのできない産物である。 蛍石は透明感のある白色で、紫外線長波で青紫色に蛍光する。何かを中心核にして雪だるまが大きくなるように成長した節がある。そのもっとも外側の殻は蛍石で、表面はもこもこした腎臓状もしくはぶどうの房状の晶癖をしめす。細倉の蛍石は木下亀城「原色鉱石図鑑」(増補改訂版、保育社、1962年)でも紹介されているが、その蛍石は緑色である。同書には大分県尾平鉱山や兵庫県明延鉱山の同様の輪鉱の標本も掲載されている。 A kind of ring ore mainly composed of white fluorite and black sphalerite and galena, which is a famous natural product from the Hosokura lead-zinc mine. It is attractive enough as fluorite is not very common in hydrothermal veins in Japanese metal mines. Fluorite is translucent and becomes bluish purple under a UV light. The outermost crust is fluorite that shows a botryoidal surface texture. Similar ring ores from the Obira mine, Oita, and t