尾去沢石 Osarizawaite

Osarizawa Mine, Kazuno City, Akita, Japan(秋田県鹿角市 尾去沢鉱山)
width: 40 mm / weight: 85 g

尾去沢の銅・鉛・亜鉛鉱脈の酸化帯に生じたかさかさした鉱片で、うぐいす色の尾去沢石が表面を覆っているものとおもわれる。尾去沢石はルーペで拡大しても結晶の形が確認できないくらいの微細な土状で、いじっていると手にくっつく。大きさの割に重さがある。方鉛鉱(比重 7.6)の残滓に加えて硫酸鉛鉱(比重 6.3)とおもわれる無色透明の微結晶が多数みられるので、そのせいだろう。

A piece of oxidized copper-lead-zinc ores in the Osarizawa mine is partly covered with yellowish green (a bush warbler's green) powdery osarizawaite. It is heavier than it looks probably because of a lot of galena residuals and anglesite.

裏側にも結晶がつく。
The green crystals on the backside.
球状に集合した部分。Mindat.org の写真をみるかぎり尾去沢石の産状としてはよくあるもののようだ。淡青色の銅の2次鉱物とおぼしきものが混じっていると考えられるところは色が薄い。写真幅は約 7 mm。
Osarizawaite seems to show this botryoidal texture. Photo width: 7 mm.
硫酸鉛鉱、未分解の方鉛鉱と共生した部分。とても色鮮やかなうぐいす色で尾去沢石の純度が高そうだ。硫酸鉛鉱は透明なものが多く、標本中にふんだんにみられる。写真幅は約 7 mm。
Fresh green osarizawaite crystalizes with black galena and transparent or translucent anglesite. Photo width: 7 mm.

先日のホリミネラロジーのセールで入手した。古いラベルがついていて、前の所持者は戦後日本に滞在していた米軍関係者らしい。単なる鉱物コレクターなのか日本の鉱産資源を調査した専門家なのか詳細は不明。くわしい分析データがないのでなんとも言えないが、かなりの量の硫酸鉛鉱がみられ、文献に記されている産状と似ていること、鮮やかな色合い、そしてホリミネラロジーへの信頼感(?)などから、個人的には尾去沢石でまちがいないんでないか、とおもっている。

A recent purchase at a special sale of Hori Mineralogy. The former possessor was an U.S. military personnel who lived in Japan after the Pacific War. It is unknown that the possessor was just a mineral collector or a professional mineralogist or geologist. Though the piece comes without analytical data, I think it is true osarizawaite judging from the occurrence, coexistence with anglesite, fresh green color, and relying on Hori Mineralogy.

参考

  • 田口靖郎が1961年(昭和36年)に報告した論文: Taguchi Yasuro, "On Osarizawaite, a New Mineral of the Alunite Group, from the Osarizawa Mine, Japan", Mineralogical Journal, Vol. 3, 1961.

  • 田口靖郎・木沢庸二・岡田昇「尾去沢鉱山産ビーバー石について」(鉱物学雑誌 10巻 5号、1972年)にも尾去沢石のことが書かれている。

  • その他、加藤昭「主要鉱物各説」(無名会、2017年)の尾去沢石の項目。木下亀城・湊秀雄「続・原色鉱石図鑑」(保育社、1963年)の硫酸鉛鉱と尾去沢石の項目。

  • 尾去沢石の理想的な組成は

    Osarizawaite:  Pb(Al2Cu)(SO4)2(OH)6

    で、1961年に尾去沢鉱山ではじめて記載されたのでこの名がある。もっと昔から知られていた銅ビーバー石

    Beaverite-(Cu):  Pb(Fe2Cu)(SO4)2(OH)6

    の鉄がアルミニウムに置き換わったもので、一般にはこれら2種を端成分とする固溶体として産出する(加藤によれば任意の割合で混ざり合うわけでもないようだ)。明礬石

    Alunite:  KAl3(SO4)2(OH)6

    と分子構造が似ているので、明礬石グループに分類される。Mindat.org によると「肉眼による鑑定は不可能」とあり、明礬石グループで色が似ているもの、たとえばイダルゴ石

    Hidalgoite: PbAl3(AsO4)(SO4)(OH)6

    などとの区別はかなりまぎらわしいという。本当に尾去沢石かどうか、すくなくともビーバー石ではなく Al > Fe かどうか、を判定するには科学的な分析が必要だ。なお最初に尾去沢で記載されたサンプルは Al : Fe = 81 : 19 だった。

  • 秋田大学鉱業博物館所蔵の標本。

    A specimen displayed at the Mineral Industry Museum, Akita University.
  • 三菱マテリアル所蔵の標本(東京大学総合研究博物館のデータベースより)。正徳ヒ・上2坑・6割の2脈から産出、とある。昭和37年(1962年)5月に採取された。この脈はその約1年後まで採掘された。