金彩唐草ののぞき猪口 Gold Arabesque Pattern Nozoki Cups
金彩の唐草文様の猪口を2つ紹介する。
Two pieces of gold arabesque nozoki-type Imari cup are shown.
1. 金彩 葵唐草文 のぞき猪口
表と裏に葵の葉とおぼしき文様を描き、その周囲を唐草で埋め尽くす。唐草を金彩で描いて、それを赤絵で縁どりするのが特徴的だ。色絵の磁器というのは得てして派手なものが多いが、この器にはむしろ落ち着きや渋さを感じる。
Two hollyhock leaves are drawn on opposite sides and arabesque patterns around them with gold and red glazes. Using these two colors on a white porcelain gives me an impression that it is quiet and tasteful.
2. 染錦 花唐草文 のぞき猪口
こちらはまず呉須で「窓」を描き、その上に金彩と赤絵で草花図と唐草文を描いている。唐草の表現方法は前のとおなじ。このあいだの平和島骨董市で入手した。
なんでも金ピカに装飾するのは成金趣味というか、あまりいい印象を抱かないが、これらの猪口の唐草文様についてはわたしはむしろ落ち着きを感じ、とても魅力的におもう。陶芸というのは限られた色で表現せざるを得ないものだが、大げさかもしれないが、この金と赤の表現は色絵磁器におけるある種の極致を示しているようにおもえる。
This Imari cup uses a blue (cobalt) glaze at first to draw window frames and gold and red colors after that to draw flower and arabesque patterns. The arabesque pattern is almost the same as the one already shown. I basically don't like the way of decorating everything with gold, but this gold+red arabesque is special to me.
参考
前に紹介した染錦のぞき猪口。おなじく赤絵で輪郭を描いた金彩唐草で器を装飾している。
九州陶磁文化館編「古伊万里の見方 シリーズ3 装飾」(2006年)によると、1690年頃から金襴手(きんらんで)とよばれる色絵磁器の様式が生まれ、海外へ盛んに輸出された。染付で描いた素地に赤・金を多用して装飾したもので、他に緑・黄・黄緑などの色絵ももちいられた。これらは白磁の余白をほとんど残さないほどに文様や図柄で器を埋め尽くす傾向にあり、わたしにはちょっと華美にすぎる感じがする。「参考」で示した猪口はこの金襴手に属するといってもいい、18世紀中頃のものであろう。いっぽう本文で示した2つの猪口は、もうすこし時代が下ったもので、金襴手の影響をかすかに残した亜種ともいうべきものだろう。