ウランガラス Uranium Glass

ウランガラスとは着色剤としてウラン化合物をもちいたガラス製品のこと。多くは緑色で、黄色のものもある。紫外線ランプをあてると蛍光を発するのですぐそれとわかる。日本では1900 ~ 1940年くらいにつくられたという。着色剤というのがミソで、当時の人はウランが放射性物質で、濃縮して条件を整えれば核分裂さえ起こせるなんてことはつゆ知らず、銅とかクロムとか他の金属と同等に扱っていた。骨董市などで目にして魅力を感じ、手元に収めているものがいくつかあるので、以下に紹介しようとおもう。

Uranium glass is a type of glassware that contains uranium compound as a coloring matter to create green or yellow glasses. It emits a distinctive light under an UV light. Japanese uranium glassware was produced from 1900 to 1940. I would like to show my collection that I met in antique markets.

1. ビールグラス Beer glass(口径 top: 57 mm, 底 bottom: 45 mm, 高さ height: 89 mm)
2. ショットグラス Shot glass(口径 top: 46 mm, 底 bottom: 33 mm, 高さ height: 67 mm)

これらはどちらも鼓形のグラスで、グラスの完成形と言ってもいいぐらいの用の美を示しているとおもう。ビールグラスのほうはななめにしのぎがはいっているのがまたおしゃれだ。たまに瓶ビールをこれに注いでぐいっとひと飲みしている。ショットグラスは秋田県南部の田舎町の骨董屋でであったもので、思い出深い。

Both glasses have a shape widening toward the top, which I think shows a beauty of convenience. I sometimes drink a bottle beer with the left one. The shot glass was sold at a local antique shop in a country town in the south part of Akita.

3. 氷コップ(口径 top: 100 mm, 底径 bottom: 67 mm, 高さ height: 75 mm)

夏にこういうのにかき氷とかデザートとかのせて出されたら涼しげでよい。縁にヒビがはいっているが、おそらく製作当初のものではないかとおもう。

This was used as a vessel of shaved ice or dessert. There are cracks at the rim, but I guess they were naturally made in the production process.

以上の3種はほとんど疑いなく20世紀初め頃に日本でつくられたもので、ウランガラスとしてはいまでもそれなりに手に入りやすい。当時相当量産されたのだろう。しかしつぎの品は素性がよくわからない。

The above three were undoubtedly made in the early 20th century Japan. I guess many uranium glasswares like these had been produced. However, the origin of the following glass is not sure.

4. 小鉢 果物図(口径 top: 130 mm, 底径 bottom: 90 mm, 高さ height: 28 mm)

やや深めの小皿というか小鉢で、メロンと桃とさくらんぼの図柄が彫り込まれている。絵の部分はすりガラスのように加工されていて、前の3点なんかにくらべたらずいぶん手が込んでいる。日本のウランガラスに関する資料でいま手元にあるのは

  • 坂崎幸之助「和ガラスに抱かれて」(平凡社、2001年)

  • 大森潤之助「日本のウランガラス」(里文出版、2008年)

だけであるが、これらにも類例は紹介されてなくて、日本のものなのか海外製なのかもよくわからない。フルーツの高野では1920年頃からマスクメロンを売り出していたし、さくらんぼの代名詞「佐藤錦」が誕生したのは1925年頃だし、桃も昔からあっただろうから、1930年前後の日本製だとしてもおかしくはない。この皿をどこで手に入れたのかとんと覚えていないので、いまさら店主に聞きようもない。だれかこいつの素性を知ってたらおしえてください。

Melon, peach, and cherry are carved and finished like a frosted glass. I am not sure it was made in Japan or not. It is not unreasonble to consider that it is Japanese uranium glass, because this kind of muskmelon was already sold in 1920 at a famous fruit shop, Takano, in Shinjuku, a Japanese cherry, Sato Nishiki, was breeded in about 1925, and peach was also popular in Japan.

補足

  • アルフィーの坂崎幸之助氏は屈指のウランガラスコレクターとして知られる。まだ「ウランガラス」の名称も流通していなかった1990年頃から、骨董市を歩き回ってはブラックライトを隠し持って手当たりしだいに(?)買い集めたらしい。カメラのコレクターとしても知られ、東京ビッグサイトでおこなわれる「骨董ジャンボリー」では毎回入口すぐのところに出店していらっしゃる。

  • 1940年代になると、ウランは「原子爆弾」の材料として統制下におかれたため、民間に流通することはなくなった。ウランガラスも以後製造されることはなかった。

  • しかし近年ウランガラスを復活させる動きがあり、日本では岡山県鏡野町が地元「人形峠」産のウランを活かしたガラスをつくっている。ウランガラス専門の美術館である妖精の森ガラス美術館(岡山県鏡野町上齋原666-5)に工房があって体験もできるようだ。