尾去沢の硫酸鉛鉱 Anglesite from Osarizawa
地味な石ではあるが、尾去沢鉱山の名産(?)のひとつ。塊状の方鉛鉱(PbS)が酸化して、周りから徐々に硫酸鉛鉱(PbSO4)で置き換えられたもの。黒い部分は未分解の方鉛鉱。微小な結晶の集合体で、やや緑がかった灰色をした、一見凝灰岩かなにかのようなみてくれである。小さな割れ目には径数 mm の白い結晶が成長しているが、透明感はあまりない。木下亀城・湊秀雄「続原色鉱石図鑑」(保育社)によると、尾去沢の卯酉ヒや正徳ヒの酸化帯にこうした鉱石がみられたそうだ。
This is one of the specialities of the Osarizawa mine. Massive galena is oxidized to be altered to anglesite. Unoxidized galena remains as black spheres. Anglesite is so minute that the ore looks like geenish gray tuff. White crystals of several milimeters in size can be seen in a small cavity. This kind of lead ores were seen at the Utori vein and the Shotoku vein according to a book written by Kameki Kinoshita and Hideo Minato.
本などでよく「交代作用」という術語を目にするが、よく考えるといったいそこで何が起こっているのか不思議である。仮に(たぶんこんな反応じゃないとおもうが)方鉛鉱に硫酸が反応すると考えれば
PbS + H2SO4 → PbSO4 + H2S
方鉛鉱が外側から徐々に硫酸に侵されたとすると、反応する領域はどんどん奥深くに移動するわけで、新しくできた硫酸鉛鉱の領域中に硫酸と副産物である硫化水素とを行き来させる通路が必要である。硫酸鉛鉱の結晶が微細で「グズグズ」だからとくに不都合はないのかもしれないが、標本をよく観察すると、硫酸鉛鉱の部分がモザイク状になっていて、黒い縁取りがされている。この黒い部分はそうした反応物質や副産物の通路だったのだろうか?仮晶(仮像)というやつがあるが、あれもどうやって結晶の形を変えないで反応させるのか不思議である。