仙台を訪問 Visit to Sendai
A one-day trip to Sendai, Japan, brought me some pieces of earthenware that came from old Tohoku potteries. I also met various rare things in Sendai City Museum, Tohoku University Museum, and Serizawa Keisuke Art and Craft Museum in Tohoku Fukushi University, which are recommendable for every tourist.
仙台蚤の市
今回の旅の主目的である「仙台蚤の市」は、東北エリアを中心に営業している古物業者が多数集結したイベントで、仙台でおこなわれるはじめての大規模な古物市、という触れ込みだった。最寄りの地下鉄の駅をおりると、たくさんの人が列をなして会場方面に歩いていたが、これらはみんなこの催しに向かう人たちだったので、おどろいた。広い芝生の会場はとにかく人でいっぱいで、各業者の品物を見るのも一苦労だった。わたしの興味にかなう品物はそれほどなかったが、古いやきものをいくつか手に入れた。
最近この手の催しが各地で盛況だ。売られている品物の多くは、せいぜい50〜60年くらい前につくられた、いわゆるレトロ雑貨。ちょっと前までは100年は経たないと「アンティーク」とみなされなかったが、最近はその基準が緩和されつつある。こういった昭和レトロもいまや立派な「アンティーク」で、100円ショップ等で並ぶ無個性な量産品では飽き足らない人々の物欲を大いに満たしている。
仙台市博物館
蚤の市のフードコーナーでビールを飲んで気持ちよくなったあと、会場に隣接する仙台市博物館を見学した。数年前に大規模な改修工事があったこともあり、中はとてもきれいだ。とくに展示ケースや照明のクオリティが高く、展示物をよく引き立てている。仙台市としては相当の予算を注ぎ込んだものとおもわれる。
常設展示の奥のほうに、宮城のやきものである切込(きりごめ)焼と堤焼、それに仙台の堤人形とおとなり山形県米沢市の相良人形を飾った部屋があった。とくに切込焼の展示は、まさに百聞は一見に如かず、圧倒的な存在感で、しばし見入った。切込焼は、仙台藩の藩窯(御用窯)としての性格をもっていて、一部の磁器についてはコストを度外視し、当時の最高の技術を注入した製品がみられる。盛期の古伊万里や鍋島焼にもひけをとらない、と言ったら褒めすぎかもしれないが、江戸後期の仙台藩は、実に見事な、独創的な磁器作品を生み出した。
ちょうどこの日は「もしも猫展」と題する特別展が開催中で、こちらも鑑賞した。名古屋市博物館所蔵の浮世絵、とくに歌川国芳の作品を中心とした構成で、全国を巡回した展覧会のラストがここ仙台のようである。国芳は大の猫好きとして知られ、猫をモチーフとした浮世絵を多く残した。猫やその他の動物を擬人化した浮世絵は実にユーモアにあふれている。個人的には、つい先日、東京の港区郷土歴史館で「おもちゃ絵」のコレクションを鑑賞したところだったので、ひときわ興味深かった。
いま、地方の博物館・資料館のたぐいの施設はどこも予算不足で、収蔵庫が満杯だったり、学芸員すら満足に雇えないなど、苦労しているところが多い。先ごろ日本国政府は、国立の博物館・美術館に対して、交付金を削減し、経費は「自分で稼げ」という指針を示した(朝日新聞電子版「文化も稼げの時代 岐路に立つ博物館・美術館」、2026年5月25〜29日)。こうした現状の中で、仙台市博物館は、わたしが小一時間見学した印象では、よくがんばっているようにおもえる。特別展は盛況だったし、宮城のやきものの展示はインパクトがあって、見る人の感動を呼ぶものがある。いっぽうで土人形は単なる「陳列」に過ぎなく、美術史や民俗学などの観点も加えて、もっと多角的に捉え、提示する意欲があってしかるべきだ。よい展示は、人を呼び、よい研究者を育む。在野のコレクターも、ここにならコレクションを寄贈・寄託してもいい、と思い立つかもしれない。いずれにしろ、地方の博物館は、存在意義が問われ、存続の岐路に立っている。
東北大学理学部自然史標本館
その後、シェアサイクルを借りて東北大学理学部自然史標本館を訪ねた。地図を見て、すぐ近くだろうとたかをくくったのだが、実際はものすごい峠道で、自転車で行ったことを後悔した(帰りは下り坂で快適だった)。
1階の古生物・鉱物標本が見応えがある。歴史的に、東北大学は地質学・鉱物学・鉱床学等の研究が盛んで、そうした研究でもちいられたと考えられるさまざまな標本が陳列されている。とくに世界各地の黒鉱型の鉱石標本が興味深かった。秋田県の太良鉱山の方鉛鉱、不老倉の方解石、花岡の硫砒銅鉱などの古典標本は貴重である。
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館
シェアサイクルで町中に戻り、バスに乗り換えて、こんどは東北福祉大学に向かった。芹沢銈介美術工芸館は1989年に当キャンパス内に開館した。初代館長の芹沢長介は考古学者で、東北大学退官後、東北福祉大学に移り、この美術館の開館に尽力した。一見「福祉」とは無関係の施設のようにおもえるが、工芸・美術品の鑑賞をとおした学生の人格の陶冶と、地域貢献とに資する、と考えたようである。
長介の父、芹沢銈介は、とくに民藝界隈で著名な染色家である。展示品は銈介の作品が中心で、他に銈介・長介親子が収集した国内外の工芸品も収蔵している。この日は「アイヌの工藝 芹沢銈介と長介の収集」と題する特別展が開催されていた。また数年前に閉館した「東北陶磁文化館」の収蔵品は、もともと芹沢長介のコレクションがもとになっており、その多くはここに移されている(一部は加美町の「切込焼記念館」に収蔵されているようだ)。1階のエントランスには、東北各地の陶磁器が20点あまり陳列されていた。
むすび
バスで中心部にもどり、一番町にある「こけしのしまぬき」に寄って、駅地下でごはんを食べて、帰ってきた。
仙台蚤の市は、人の数だけで判断しても、たぶん大成功のイベントだったろう。また近々開催されるかもしれない。今回訪れた3つの博物館・美術館は、どれも個性的で、クオリティが高く、仙台の観光スポットとして万人におすすめできる。
まだまだ仙台およびその周辺には行ってみたいところがたくさんある。加美町の切込焼の窯跡にはぜひ行きたいし、栗原市の細倉鉱山跡も行こう行こうといいつつ、まだ訪れたことがない。東北学院大学にも博物館が併設されているようだ。また旅行を計画しないといけない。









