色絵菊花文 のぞき猪口 Chrysanthemum Nozoki-type Cup
大振りでやや尻張り型ののぞき猪口で、呉須をうすく塗り込めて、その上に植物の花の文様を色絵と金彩で描く。菊の花とおもわれる文様は、おそらくだが、白土型紙摺りと呼ばれる印判である。九州陶磁文化館編「古伊万里の見方 1.種類」(2004年)や「同 3.装飾」(2006年)によれば、白化粧土をつかって文様を描く手法は、中国では餅花手(もちはなで)とよばれ、日本でも初期伊万里の時代からつくられている。18世紀前半くらいまでみられるとのことなので、こののぞき猪口もそのくらいの時代があるかもしれない。古伊万里ののぞき猪口としては、けだし珍品である。
This is a relatively large nozoki-type Imari cup with a wider bottom part than the top. Plants and flowers are drawn with color glazes on a light cobalt blue background. Chrysanthemum (kiku) flower is probably a print using white clay (engobe) and a paper pattern, which had been seen in old Imari-ware from the 17th to the early 18th centuries. I think this is a rare nozoki cup.
補足
以前紹介した、おなじ白土型紙摺りの白磁猪口はこちら。
「古伊万里の見方」によれば、一般に白化粧土で描いた文様のことを白絵(しろえ)と呼び、紙摺り印判の他、筆で描いたり、あるいはスポイトのような器具をもちいて白土を盛り上げるように描く「イッチン」技法もある。古伊万里以外でも一般的にもちいられる手法である。
いまいちよくわからないが、工程としては、素焼きした素地の上に刷毛で呉須をうすく塗って、その上に白土で文様を写し、透明釉をかけて焼成、さらに色絵を焼き付ける、のだろう。いわゆる「墨弾き」の技法で花びら文様などを白く抜く例は図録などで見たことがあるが、こういう白絵の猪口は白磁以外でははじめて見た。