尾去沢の孔雀石 Malachite from Osarizawa
このような肉厚でムクの孔雀石は、日本では絶産して久しく、いまや目にすることもまれである。同じ秋田県の阿仁鉱山や荒川鉱山の孔雀石は、いくつかの博物館(たとえば東京・上野の国立科学博物館や筑波の地質標本館)で見られるが、尾去沢のものは意外とないようで、その点でも貴重かもしれない。ただお断りしておくと、これは「ヤフオク」で入手したしろもので、産地が信頼できるものかどうか、ややこころもとない。。。
サイズこそ小さいが、表面のようすは、まるでコンゴ産か、と思われるほど立派だ。表面のモコモコが、パイプ状(鍾乳状)の構造の末端であることは、ちょうど前掲の黄鉄鉱(白鉄鉱)と同様。同心円状に縞々が見える部分もある。付属した手書きのラベルには、旧金石舎標本、とあった。これが確かならば、かなり古い標本であることは疑いない。金石舎とは、宮沢賢治や長島乙吉などのビッグネームを語る際にも出てくる、伝説の宝石・鉱物標本店である。少なくとも昭和時代までは鉱物標本を扱っていたと思われる。いまも東京・神田に同じ屋号のビルがある。
It is rare to see a thick and pure malachite in Japan because it has long been extinct. Malachite specimens from Ani and Arakawa mines in the same Akita prefecture are relatively well known and displayed in some museums (eg. National Museum of Nature and Science in Ueno and Geological Museum in Tsukuba). I found this specimen at an internet auction, feeling a little uncertainty about the locality...
The size is small but the texture is beautiful like Congolese one. The pipe-like (stalactic) morphology is similar to the previous pyrite (marcasite) specimen. There is a concentric ring pattern. The label says the previous possessor obtained at Kinseki-Sya, a legendary gem and mineral shop at Kanda, Tokyo, that had a relation with Kenji Miyazawa and Otokichi Nagashima.
追記
和田八重造、粟津秀幸「原色日本鉱物図譜」(松邑三松堂、1936年)は阿仁鉱山産の孔雀石の写真を掲載しているが、当時からしてすでに「良品がないので(顔料等の)原料をアメリカから輸入」していると記している。 (2020年10月)