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Showing posts from December, 2024

松郷屋の焼酎徳利 Matsugoya Shochu Bottle

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height: 24 cm / width: 14.5 cm ボウリングのピンみたいに縦長な形状をしたこの器は、民藝界隈で「松郷屋の徳利」として知られる、幕末から明治期に新潟県西蒲原(にしかんばら)地方の松郷屋(まつごうや)地区で焼かれたとされる徳利に酷似している。全体にナマコ釉がかけられているが、青白い発色は底に近い部分に限られ、器の大部分は釉が流れてしまって緑褐色になっている。ろくろで成形したときの筋目がそのまま残っていて一見荒々しいが、口べりや高台の仕上げはとてもていねいで、職人の技術の確かさがうかがわれる。胴に大きなニューが通っていて多少水漏れするのが残念だ。 松郷屋の徳利は新潟市内の酒造業者が大量に発注した酒瓶であって、これに焼酎を詰めておもに北海道向けに北前船で出荷した。高さは 20 〜 26 cm で、容量は7合半(約1.4リットル)以上と決まっていた。北蒲原の旧笹神(ささかみ)村(現在は阿賀野市)でも同時期に同様の徳利がつくられており、本品も笹神産の可能性がある。明治前期の最盛期には年に50万から150万個も生産されたという越後の焼酎徳利だったが、景気は長くは続かず明治後期にはこのビジネスは終焉した。基本的に使い捨てで残存数が少なく、いまでは古物市場でもほとんどみかけない。 This vertically long bottle resembles what is known as "Matsugoya bottle" in Japanese folk-art community, which was made in Matsugoya, Nishi-Kanbara Region, Niigata Prefecture, in the late 19th century. The bluish white glaze turned to dark green except for the lower part probably because of unexpected fluidity. The body seems to be crudely formed with striation, but the top and bottom parts show a delicate craftsmanshi...

孔雀石の根付 Malachite Netsuke

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size: 56 mm × 38 mm × 18 mm 秋田の古物商から求めた孔雀石(マラカイト)の根付。表面は磨かれていて、部分的に縞模様が出ている。紐を通す穴が直線的にあいている。もしこれが国産の孔雀石だったとしたら、入手先からしておそらく秋田の阿仁鉱山か荒川鉱山あたりで、江戸後期から明治期に産出したものだとおもう。 天然の孔雀石は本品のような装飾品のほか岩絵具(緑青)の原料として一定の需要があった。一般に孔雀石(Cu 2 (CO 3 )(OH) 2 )は銅鉱床の酸化帯に生ずる2次鉱物で、それ自体はありふれたものだが、ある程度肉厚の塊となると産出地は限られる。日本では各地の銅山で多少の産出があったが、明治末頃までにはどこの産地もほとんど掘り尽くされ、海外から原石を輸入するか、顔料用途としては合成品がつかわれるようになった。 This is a netsuke made of malachite that I bought from a dealer in Akita. The polished surface shows a banded pattern in part. A straight hole is made for the use as a netsuke . If it was a Japanese malachite, it would be produced from the Ani or Arakawa Mines in Akita in the 19th century or before. There was a little demand for natural malachite as a pigment and decorative materials. Malachite is generally a common secondary mineral in the copper deposit, but a massive ore is rare. Malachite in Japanese copper mines was almost exhausted by the end of the 19th century, and it was imported from abroad or, for...