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Showing posts from February, 2024

梅花図 碗形猪口 Plum Blossoms Cup

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Top width: 78 mm / Height: 51 mm / Bottom width: 38 mm 以前の記事 にも書いたが、こういった古手の碗形の猪口をみつけるとつい財布のひもがゆるんでしまう。正面に岩山(太湖石?)の上に生える梅の木と花が描かれ、裏には鳥が飛んでいる。梅の枝を境界線と見立てて、上側を呉須でぬりこめるのは、いかにも「江戸」を感じさせる独特のデザインである。大小の図案の対比、効果的な余白、高台内の一重圏線、端正な器形など、17世紀後半、時代が下ったとしても元禄期までとおもわれる、古い時代の猪口の特徴を備えているとおもう。 As I wrote before , this kind of old Imari cup is one of my favorites that loosen the purse strings. Ume (Japanese plum) tree and blossoms growing from a rocky hill are shown on one side, and a flying bird on the other side. The ume 's branches play a role of a boundary and the upper part is glazed in blue, which is so unique a design that it is definitely full of the Edo (old Japan in the 17th century to the early 19th century) flavor. This cup has several characteristics of the late 17th century's Imari cup such as a contrast of big and small drawings, an effective white margin, a blue circle at the bottom, and a well-made curved form. 最上手、というほどではないが、全体としてバランスのとれた、この時代の佳作といえるだろう...

上野目焼の徳利 Old Kaminome Bottle

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Height: 18.2 cm / Width: 12.3 cm 骨董商によればこれは宮城県旧岩出山町(いわでやままち)の上野目(かみのめ)焼の器である。臭いからして油入れとしてつかわれたものだろう。全体に黄褐色の飴釉がかけられ、胴部には飛鉋(とびかんな)とよばれる技法で規則的な筋目がついている。洗練されたデザインで、存在感がある。同じような徳利は福島県の大堀相馬焼にもみられる。実際、上野目焼は相馬の技術を導入して発展したとされ、一見しただけでは産地がどちらか判然としないものがある。上野目は鉋目がどっちに傾いているとか、判別法はあるらしいが、わたしにはよくわからない。いずれにせよ江戸後期の古い東北の器である。 An antique dealer who sold this bottle said it was made in Kaminome, Iwadeyama Town, Miyagi, Japan. A smell from the mouth implies it would be an oil bottle. A regular pattern made by an edged tool and a yellow-brown glaze make this bottle artistic. The Soma-Obori pottery, Fukushima, also made a very similar bottle. It is said that Kaminome was influenced by Soma-Obori, and some antique earthenwares are difficult to tell the place where they were baked. Somebody says there is a difference in the direction of the edge pattern, but I can't explain it. Anyway, it is an old bottle made in the Tohoku region in the early to mid 19th century. 容量は5合ほど。首の根元がすぼまった独特の器形...

白岩焼の大すず Big Bottle of Shiraiwa Earthenware

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Height: 37.8 cm / Body width: 21.5 cm / Top width: 6.8 cm 3升(5.4リットル)入りの大型のすずで、類品と比較するに、幕末から明治期に秋田県仙北市(旧角館町)の白岩地区で焼かれた器とみていいとおもう(秋田あたりでは液体をいれる容器で口が細いものをスズ、寸胴形のものをカメという)。なんといっても首から肩の部分がかさね餅のように段々になっているのが特徴的だ。白もしくは青白く発色するナマコ釉がたっぷりとかけられており、全体にあたたかみを感じさせる、よいデザインだとおもう。尻の部分に三本の筋が刻まれていて、ちょうどそこで釉薬の垂れがとまっている。高台のつくりは大物にしては繊細で、白岩の作風を感じる。 かつて秋田あたりの農家では自家製のどぶろく(コメを発酵させた濁酒)をこういった大型の容器に貯蔵したらしい。どぶろくの製法や飲み方がよくわからないので確かなことは言えないが、発酵はもっと大容量のかめや樽などでおこない、それを荒ごししたものをこうしたすずにいれておいて、随時お椀とか湯呑みなどで飲んだものとおもわれる。ガラス製の一升びんが全国的に普及するのは1920年代以降と考えられ、それまでは陶製のびんの需要は大きかったにちがいない。 This large bottle has 5.4 liter capacity and was probably baked in Shiraiwa District, Senboku, Akita Prefecture, Japan, in the 19th century. The white or bluish white color and the design like a multi-layer cake give a good impression. Three lines engraved at the lower part seem to have stopped the glaze flowing down. The sharp bottom rim shows a characteristic of Shiraiwa earthenware. It is said that farmers in Akita used to keep h...

童子牛追図 のぞき猪口 Cow and Boy Nozoki-type Cup

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Width: 51 mm / Height: 57 mm 少年が牛に縄をゆわえて引っ張る図は、古伊万里の絵柄としてはそれなりに例があり、初期伊万里にもみられる(「古伊万里蕎麦猪口・酒器1000」講談社、2001年)というが、のぞき猪口の絵柄としてはかなり珍しいだろう。絵柄も珍しいが、もっと珍しいのは口の部分の細工だ。わたしも20年近く古伊万里ののぞき猪口に注目してきたが、こういった「くびれ」のあるのぞきは1000個に1個かそれ以下の出現頻度だとおもう。 There have been known a few examples of Imari porcelains that depict a boy pulling a cow with a rope, but I think a nozoki -type small cup with this drawing is really rare. It is much rarer to see a wavy "neck" at the top part. Frequency of appearance of that will be one to a thousand or less from my 20-year experience. 古伊万里ののぞき猪口は、酢、味噌、醤油、煎り酒など刺身のつけだれ(あるいはかけ汁)をいれるための器で、あらたまった会席料理の中で刺身皿に添えられたものだ。江戸時代は、鮮魚の流通はいまほど発達していなかったし、酢や醤油もまだ貴重だったから、こういった「ごちそう」の席を華やかにするような、調味料専用の器が尊ばれたのである。 以下はほとんど根拠に乏しい私見ではあるが、17世紀後半から18世紀初頭にみられるのぞき猪口の前駆的なタイプには、 長猪口 や 末広がりのもの など、形状にバリエーションがある。その後、18世紀前期〜中頃になると、円筒形のいわゆる「のぞき猪口」が形式として確立する。酒や酢、醤油等が大量生産されるにともなって「刺身皿にはのぞき猪口」という取り合わせがある種のお約束として一般に普及していったのだろう。 それから50年くらいたって、18世紀末から19世紀になると、末広がりの形だったり、チュー...