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Showing posts from January, 2023

和賀仙人鉱山の赤鉄鉱 Hematite from Waga Sennin

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Sankaku Deposit, Waga Sennin Mine, Kitakami City, Iwate, Japan 岩手県北上市 和賀仙人鉱山 三角鉱床 Size: 70 × 55 × 35 mm / Weight: 137 g 漆黒で金属光沢のある六角薄板状の赤鉄鉱(ヘマタイト Fe 2 O 3 )が積み重なるようにして多数集合する。褐色に色づいた石英を少量ともなうが、ほぼ純粋な赤鉄鉱の塊だ。大きい結晶で径 10 mm ほど、厚さは 2 mm ほどある。 A small piece of iron ore composed of numerous hexagonal black hematite plates and some brown-colored quartz needles. The biggest crystals are around 10 mm in diameter and 2 mm in thickness. 拡大図。光の加減によっては灰色っぽく見えたりする。 和賀仙人鉱山はスカルン型の鉄鉱床を掘った鉄山で、遠平(とおひら)・下遠平・三角(さんかく)・金肌(かなはだ)などの鉱床が点在していた。下遠平には銅の鉱床もあった。鉱石の多くは塊状の雲母鉄鉱(径 1 mm かそれ以下の赤鉄鉱の鱗片状の微結晶が集合したもの)だったが、晶洞には粗粒の結晶がみられた(以上「新岩手県鉱山誌」より)。とくに三角鉱床はかつて美麗な赤鉄鉱(鏡鉄鉱)の結晶を産出したことで知られ、かの高壮吉をして「伊太利国エルバ島産の遠く及ばざる」「世界唯一の好標本」と絶賛させたほどである(地質学雑誌 75号、1899年)。「日本鉱物誌・改訂版」には径 3 cm、厚さ 0.5 cm に達する結晶があったと記されている。 The Waga Sennin Iron Mine had several skarn-type deposits such as Tohira, Shimo-Tohira, Sankaku, and Kanahada. Copper ores were also mined at Shimo-Tohira. The iron ores basically consisted of m

尾去沢鉱山のなるみ金鉱 Narumi Gold Ore from Osarizawa

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Osarizawa Mine, Kazuno City, Akita, Japan 秋田県鹿角市  尾去沢鉱山 Size: 13.5 × 10 × 5.5 cm / Weight: 770 g 尾去沢鉱山の一部の鉱脈の浅部には上の写真のような緑泥石と赤鉄鉱を主体とする鉱石がみられ、金鉱石として採掘された。現地では「なるみ鉱」とも呼ばれ、尾去沢の鉱脈中もっとも金に富んでいたという六月ヒ(ヒは金へんに通で鉱脈のこと)では 1 トンあたり 10 〜 20 グラムの含金があった(「秋田県鉱山誌」より)。なるみ鉱は一種の輪鉱(いくつかの鉱物が同心円状に沈殿した鉱石)とされていて、この標本も切断面を観察すると、緑泥石の針状微結晶を主体とする部分の周囲に赤鉄鉱や黄鉄鉱が沈殿し、最後に厚さ 5 mm 弱の石英層が覆っているのがわかる。金粒がどこかにあるはずだが、なるみ鉱中の金はせいぜい径 0.03 mm 程度の微粒であるとされており(堀純郎および椎川誠の論文より)、黄鉄鉱や黄銅鉱とのちがいも不明瞭なこともあいまって、わたしにはみつけられなかった。 There were chlorite and hematite-rich " narumi " gold ores at the shallower part of some copper deposits in the Osarizawa Mine. The gold content of  narumi ore was 10 to 20 g per ton at the Rokugatsu vein that was most richest in gold in Osarizawa. Narumi  was a kind of ring ore. The specimen in the above photo is sliced at the bottom, where quartz, hematite, and pyrite precipitate over a green chlorite-rich part. It is difficult for me to find gold particles, because gold in narumi ore is general

荒川鉱山の赤銅鉱 Cuprite from Arakawa

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Arakawa Mine, Daisen City, Akita, Japan 秋田県大仙市(旧 協和町) 荒川鉱山 Size: 59 × 43 × 30 mm / Weight: 116 g ほぼ赤銅鉱のみからなる鉱片。結晶は径 1 mm ほどで、八面体の面と立方体の面が両方出ているもの(切頂八面体)が典型的である。表面がやや黒っぽく変色しているものの、光を当てると鮮やかな赤色を示す。鉱床浅部に自然銅が生じて、その後赤銅鉱に変化したものとおもわれるが、見たところ自然銅は存在しない。結晶サイズは小さいが、これだけのボリュームをもった赤銅鉱の標本は日本産としては貴重だろう。 荒川鉱山の銅鉱脈の酸化帯からは自然銅・赤銅鉱・孔雀石などが多産した。三浦宗次郎が明治26年(1893年)に著した論説( 「荒川銅山の鉱石について」地学雑誌 5巻 5号 )には、かつて百目石ヒ(ひゃくめいし;ヒは鉱脈のこと)で自然銅・赤銅鉱がたくさん採れたがすでに掘り尽くされて休業中であること、当時自然銅・赤銅鉱が採掘されていたのは荒川の主要銅鉱脈である嗽沢ヒ(うがいさわ)の通洞レベル(鉱石を外部に搬出するための主要な水平坑道のレベル)の南西端だったことが記されている。また岩崎重三が大正7年(1918年)に著した 「日本鉱石学 銅篇」(内田老鶴圃) によると、荒川鉱山には当時でもまだ自然銅の鉱脈が残っていて、採掘中だったらしい。これは嗽沢(うがいさわ)ヒの南端の小支脈で、走向方向に 70 尺(21 m)、深さ方向に 20 尺(6 m)の部分の鉱石鉱物がほぼ自然銅と赤銅鉱からなっていて、相当の銅品位を誇ったという。 ドイツ・クランツ社の古いラベルがついており、いわゆる里帰り標本である。 A piece of copper ore almost purely composed of cuprite. The crystal is typically 1 mm in size and surrounded by both octahedral and cubic faces. The color is dark but turns to wine red under a strong light. There appears no native copper though