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Showing posts from February, 2023

そば猪口形の小さな猪口 Small Bucket-shaped Imari Cups

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そば猪口をぎゅっと縮めたような、バケツ形の小さな猪口がある。芽猪口、姫猪口、豆猪口などと呼ばれる。量産されたものではなく、そば猪口やのぞき猪口なんかに比べれば数はずっと少ない。 The following old Imari wares can be classified as small "bucket-shaped" cup that is much rarer than soba-choko and nozoki-choko . 1. 花唐草文 Flower Arabesque 18世紀 18th century 口径 top width: 60 mm / 高さ height: 40 mm / 高台径 bottom width: 42 mm この花唐草文様は江戸中期頃相当はやったようで、これと双璧をなす蛸唐草とともに古伊万里を代表する絵柄と言えよう。現代の古美術市場でもたいへん人気がある。ただそれゆえにこそ、これはと言えるようなきれいな花唐草文の器はなかなか見かけないし、あってもかなり高価である。この猪口も呉須がにじんでしまっていて、お世辞にもていねいな絵付けとはいえない。器自体はたいへん薄造りで、光が透けるほどである。 " Hana-karakusa " (flower arabesque pattern) was very popular in the mid Edo period. Hana-karakusa and another popular pattern " tako-karakusa " (octopus arabesque) are probably the best known old Imari designs and they are highly rated in modern antique markets. That means it is difficult to find well-drawn hana-karakusa cups at a reasonable price. Actually, I can't say this example is a first-class Imari as the blue

撫子文 のぞき猪口 Pinks

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18世紀 18th century 口径 top width: 50 mm / 高さ height: 51 mm / 高台径 bottom width: 36 mm この文様は撫子(なでしこ)の花とされている。古伊万里の絵柄としてはめずらしいものではないが、よく見かけるのは大型のそば猪口で、小型ののぞき猪口としては案外めずらしい柄なのではないかと、のぞき猪口をあつめて早20年にもなろうかというわたしはおもう。東京・有楽町の国際フォーラムでやっている大江戸骨董市でみつけた。おや、めずらしいな、とおもって裏をみたら 1.5 というシールが貼ってあって、1万5000円はちょっと高いだろうとためらっていたら、実際は縁裏にソゲがあって 1500 円だった。傷はあるけれどもつかう分にはそれほど支障なく、昼過ぎにでかけた割にはいいものに出会えた。最近は生活必需品の物価が高くなってこういう骨董品は売れなくなったのか、とてもリーズナブルな価格設定だ。会場は外国人観光客とおぼしき人であふれていたが、この業界もかれらの購買欲にたよるしかないのかな、とおもったりする。 This pattern represents pinks (dianthus) and is quite common in old Imari cups. However, most of them are large soba-choko cups and I guess from my almost twenty-year experience that it is rare in small nozoki -type Imari cups. I found it at Oedo Antique Market held in a courtyard of Tokyo International Forum. I first thought a small label at the bottom part that read "1.5" meant 15,000 yen, but it was actually 1,500 yen because there was a flaw at the top edge. The flaw didn't matter v

平清水の古いうつわ3点 Old Hirashimizu Ceramics

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東北のやきものへの興味はいまだ衰えず、またしても以下のような品物をあつめてみた。たぶんすべて山形県山形市の平清水焼の古い器である。 My thirst for Tohoku folk potteries still continues. All the ceramics below are probably from Hirashimizu, Yamagata, Japan. 1 白釉片口 20世紀はじめ頃 Early 20th century 口径 top size 14 × 15 cm / 高さ height 7.5 cm この真っ白に化粧がけされた片口は平清水独特のもので、すくなくとも東北の古いやきものの中では美術的な評価が比較的高い。日本民藝館所蔵の同手のものが1930年代の製品とあるので(「東北へのまなざし 1930-1945」展覧会図録、日本経済新聞社、2022年)、せいぜい明治末から昭和初期あたりのものだろう。 すでに紹介した灰色の釉薬がかかった片口 よりは時代は新しいものとおもわれる。マットな白釉のなんてことのない量産品だが、ところどころ虫食いがあってその周辺に灰色のしみが出ているようすは、いわゆる雨漏手にも似たわびさびを感じさせ、現代の器とは一線を画する手仕事の美にあふれている。容量は2合に満たないくらいで晩酌につかうにはじゅうぶんなサイズだ。 平清水は千歳山の豊富な陶土にめぐまれ、江戸後期から明治にかけて東北の一大窯業地として栄えた。最盛期は20基以上の窯が林立していたといい、現在も2軒の窯元が存続する( 「山形県ふるさと工芸品」のページ など)。平清水は東北古窯のなかでも磁器を多く焼いた産地としてしられる。江戸時代中期までは磁器は高級品であって限られた階層にしか流通しなかったが、19世紀になると日本各地で磁器生産が本格化し、徐々に人々のあいだに浸透していった。明治になると真っ白で堅牢な磁器に対する人気はいよいよ高まり、それまでの土物の陶器は「土器」などと称して見下されていた節がある。平清水の磁器生産も幕末から明治中期にかけて最盛期を迎えたが、瀬戸や関西方面の大量生産品に価格や品質の面で太刀打ちできなくなり、陶土の品質を落とすかわりに器に白化粧をほどこして磁器に似せた製品を数多く生産するようになった。青いコバ